60代を過ぎても若作りをするのは恥ずかしい。そのように思っている方は、多いかもしれません。
しかし、「今後の人生を生き生き過ごすためには、できるだけ若作りはしてください」と語るのは、高齢者専門の精神科医の和田秀樹先生です。
『80歳の壁』や『60歳からはやりたい放題』などのベストセラーを持つ和田先生に、年を取ってからこそ、若作りをしたほうがよい理由を教えてもらいました。
『60歳からはやりたい放題[実践編]』© 女子SPA!
(本記事は『60歳からはやりたい放題[実践編]』(和田秀樹著)より抜粋・構成しています)
◆若作りは老化のスピードを和らげる
※画像はイメージです(以下同)© 女子SPA!
アンチエイジングは脳にも良い影響を与えるため、老化のスピードを和らげることができるからです。想像してみてください。
鏡に映った自分を見て、「なんて年を取ったんだろう」とため息をつくのは脳にストレスを与えます。
一方で、「なんて今日も肌艶がいいんだろう」「自分もまだまだイケるな」と思ったほうが、脳には良い効果を与えます。おしゃれをして町へ出かけると、気持ちがワクワクと高揚するもの。
実際、老人ホームなどへ視察に行っても、お化粧をすると背筋が伸びる女性は大勢います。また、スーツを着ると背筋が伸びるという男性も少なくありません。
反対に、いつもダラリとしたTシャツやジャージ、パジャマなどでゴロゴロする日々を送っていると、気持ちが切り替わらず、脳への刺激もなくなり、しまいには体調を崩してしまうこともあります。
◆「人の心は内面よりも外面」
「生き生きとした60代」に実は共通していた特徴。恥ずかしくない“若作り”の方法があった© 女子SPA! 現代の認知科学の世界では、人の心は内面よりも外面によって形作られるものだという考え方が強まっています。
外見や行動によって人の心は変化し、それを受けて体の状態も変わる。だからこそ、60歳以降は、世間体を過度に気にし過ぎるよりも、心がどう思っているかを大切にしてほしいのです。
着飾ったり、外見に注意を払ったりと、心がワクワクする行動を取ることで、自然に体や脳の状態も良くなっていきます。
気持ちがウキウキしていると、ホルモン分泌や前頭葉の働きが活発になり、見た目にも良い影響を与えます。
若い格好をして、いつも華やかな人は、心も常に若々しいのはそういうことなのです。
反対に、明らかに「おじいさん」「おばあさん」と思われるような身なりや体型に気を使わない格好をしていると、心も老け込みやすくなります。
たとえば、洋服の色にしても、シニア世代になるとモノトーンやベージュなどのくすんだ色の服を選びがちですが、たまにはオレンジや赤、黄色などの華やかな色の服を着るのも気持ちが明るくなるものです。
どうせ、多くの人は自分が意識するほどに、他人のことを気にしていないもの。
「これは自分の年齢には合わないのではないか」などと気にせず、おしゃれをしましょう。
◆モデルケースを思い浮かべておく
「生き生きとした60代」に実は共通していた特徴。恥ずかしくない“若作り”の方法があった© 女子SPA! 近年、「老後」と言われる時間は以前よりぐっと長くなりました。
事実、厚生労働省の令和3年簡易生命表によれば、65歳の平均余命は男性が19.85 年、女性が24.73年と、老後と一言でまとめるにはあまりにも長いのです。
とはいえ、「まぁ、人生は何とでもなるだろう」と思っていては、漫然と時が過ぎていき、気が付けば老いが進み、人生が終わってしまったなんてことになりかねません。
生き生きと若々しく年を取って、人生を楽しみたいのであれば、いまから早めに戦略を練っておくに限るでしょう。
そこでお勧めしたいのが、今後、年を取ってから、自分はどんな人間になりたいのかを考えておくことです。
これまでのように横並びの人生でなくなるし、前頭葉が老化して意欲が低下する前に、「年を取ったらこういう人になりたい」というモデルケースを頭に浮かべておくと良いでしょう。
参考にするには、少し年上の芸能人や過去の偉人、身近で憧れる人でもいいでしょう。そして、その理想像に近づけるにはどうしたらいいのかを、きちんと考えておきましょう。
◆「お年寄り」ではなく「素敵な成熟した大人」へ
「生き生きとした60代」に実は共通していた特徴。恥ずかしくない“若作り”の方法があった© 女子SPA! 余談ですが、欧州などに行くと、ポルシェを乗り回したり、ブランドものの洋服をすらりと着こなして歩いている外国人をよく見ます。
さらに驚くのが、そうした外国人の多くは、60代以上のシニア世代であることが多いのです。
また、昨今はインバウンドで外国人旅行客が日本にも増えてきましたが、注意してみると、意外と高齢の観光客が多いことにも驚くのではないでしょうか。
欧米の人たちは、年を取ってからも「人生を楽しむ」という姿勢を貫いているので、日本のように「引退したら高齢者」然とするのではなく、引退しても「一人の大人」として、人生を謳歌しています。
私たち日本人も、ぜひ「お年寄り」ではなく「素敵な成熟した大人」になりたいものです。
<和田秀樹 構成/女子SPA!編集部>
【和田秀樹】
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。 東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、 現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。 高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。 ベストセラー『80歳の壁』(幻冬舎)、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)など著書多数。