「生成AI、著作権侵害のおそれ」知的財産保護へ方策を検討…政府原案に明記

政府の知的財産戦略本部(本部長・岸田首相)が近くまとめる「知的財産推進計画2023」の原案が判明した。インターネット上のデータを使って文章や画像を作る「生成AI(人工知能)」を巡り、著作権侵害の事例が多発することへの懸念を示し、AIによる著作物の学習が侵害にあたるケースなどの論点整理を進めて必要な方策を検討すると明記した。 【表】主な「和製生成AI」の開発状況

 同計画は、知的財産全般の保護や活用などについて政府の施策の方向性を示すもので、毎年策定されている。今年は独立した項目として生成AIをとりあげ、課題などを整理した。

 原案では、生成AIと知的財産の関係について、技術の急速な発展と普及に伴って「改めて検討する必要がある」と指摘。「生成AIの開発・提供・利用を促進するためにも、懸念やリスクへの適切な対応を行うことが重要だ」とした。

 著作権法上の課題としては、「オリジナル(原作)に類似した著作物が生成されるなど、著作権侵害が大量に発生し、個々の権利者にとって紛争解決対応も困難となるおそれ」などに言及した。

 その上で、〈1〉AI生成物を利用・公表する際の著作権侵害の可能性〈2〉学習用データとしての著作物の適切な利用――などの論点に関し、具体的な事例を踏まえて「考え方の明確化を図ることが望まれる」と強調。施策の方向性として、「AI技術の進歩とクリエイターの権利保護の観点に留意しながら、必要な方策を検討する」とした。今後の方策の具体的な内容などは記述されなかった。

 現行の著作権法は、2018年に改正された30条の4で、AIによる著作物の学習には原則として著作権者の許可が不要と定めている。例外で「著作権者の利益を不当に害する場合」は使用できないとする規定があるが、文化庁は従来、該当するケースを限定的にしか示していない。原案では、例外規定に基づき著作権侵害にあたる場合の考え方を明確化することも求めた。

 生成AIを活用した発明の特許審査については、「AIによる自律的な発明の取り扱いに関し、諸外国の状況を踏まえて整理・検討する」と説明。特許庁の「AI審査支援チーム」を強化し、審査事例を積極的に公表していくとした。

 このほか、生成AI以外の項目では、大学と大企業が共同保有する特許について、大学の判断で利用を許諾できる環境の整備が盛り込まれた。特許技術がライバル社に使われないよう大企業が許諾を拒否し、スタートアップ(新興企業)などによる活用が進まない現状を打開する狙いがある。

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