1カ月の生活保護費相当の約13万円の報酬を提供する代わりに、私生活データのすべてを収集する社会実験の参加者を募っていたIT会社「Plasma(プラズマ)」(東京都目黒区)は、実験参加の報酬を20万円に上げた。ネット上で「貧困ビジネスでは」などの批判が集まったことを受けての措置だが、参加希望者は増え続けているという。【吉田卓矢/統合デジタル取材センター】
同社の計画によると、約1カ月間、個人宅の居間やトイレ、脱衣所などに複数台のカメラを設置し、行動を撮影。個人が特定できないよう顔や体などをマスキング処理した上で動画の一部を企業に提供し、どういうビジネスの可能性があるかを探る実証実験をするという。10月27日から参加者の募集を始め、当初は参加の対価として、都内23区の30歳前後の人々に支給される生活保護費相当額の13万2930円を提示していた。ところが、報道やソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で話題となり、「生活保護者に人権はないのか」「倫理的に問題だ」などの批判がツイッターなどで多く上がった。同社は実証実験の実施に影響が出るとして金額を再検討し、20万円に変更したという。
遠藤宏季社長(28)は「生活保護の問題は、今回の社会実験のメインテーマではない。いろいろな反応も検証しており、問題があればフィードバックし、実験デザインを細かく変えたい」と話す。主な批判に対する見解もホームページに掲載した。
一方、報道などを受け、参加応募者は大幅に増え、今月10日までに約500人に上った。男女比は4対1で、年齢は20~30代前半が最も多く、年収分布では300万~400万円台が多いという。応募理由として「お金」を挙げた人は3~4割で、「社会貢献をしたい」などの声もあるという。応募者が大幅に増えたことから、同社は当初5人程度と想定していた対象者を増やす見通しで、協賛企業の募集も考えているという。