「社会調整」で子供連れ去り 32年前の誘拐事件、中国で波紋広がる

中国南部の広西チワン族自治区に住む夫婦が、32年前に起きた子供の連れ去り事件の捜査を地元政府に陳情したことをめぐり、波紋が広がっている。地元政府は人口を抑制する当時の政策に基づき「社会調整」として公的に連れ去ったことを認め、陳情を受理しないと回答したためだ。事態を重く見た上部組織が直ちに関係者を停職処分にする事態に発展している。

 中国メディアによると、同自治区全州県に暮らす夫婦には7人の子供がいる。1990年夏、旅館に宿泊していたところ5人の男女が突然現れ、当時1歳の末っ子の息子を奪い去った。夫婦は今年6月、誘拐・売買事件として捜査するよう陳情した。

 これに対し、地元政府の衛生当局は今月1日、「90年代は計画出産の情勢下で人口抑制を実施しており、計画外で生まれた子供の中から1人を選んで『社会調整』を行ったのは、地元政府の決定だ」と回答。さらに、「子供の行き先についてはいかなる記録も残っておらず、陳情は受理しない」とした。

 「社会調整」がどのような行為であるかの説明はない。ただし、中国の一部の地域では1979〜2015年に実施された「一人っ子政策」のもと、当時の地方政府が人口増加を抑えるよう厳しく対応していた事例が指摘されている。

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