キャンプ用品メーカー「スノーピーク」(本社・新潟県三条市)が好調だ。国内市場でやや落ち込みは見られるものの、コロナ禍でのアウトドアブームも背景に、昨年は過去最高の業績を上げた。山井太(とおる)会長兼社長にインタビューすると、顧客との独特な向き合い方が浮かんできた。(新潟テレビ21・笹井継夫) 【写真】社長を辞任したスノーピークの山井梨沙氏 ■2021年は売上高、営業利益ともに過去最高 スノーピークは1958年に金物問屋として創業。現在ではキャンプのほか、アパレルや食品、住宅事業も手がける。2021年の売上高は257億円、営業利益は38億円で、ともに過去最高を記録。効率的に利益を上げていることを示すROE(自己資本利益率)も19・7%と、上場企業にとって望ましいとされる8%を大幅に上回る。 好調の理由を、山井氏はインタビューの冒頭で、「我々ぐらいべたべたにお客さんと付き合っている会社はない」と切り出し、1998年から毎年続けているキャンプイベントを挙げた。バブルが崩壊しキャンプブームが去った後、若手が顧客との距離を縮めるために始めたもので、自身も「アウトドアブランドでも上場会社でも、15万人のユーザーと1泊2日で時間を過ごした経営者は僕一人だけだ」と自負。ここでの対話を商品の開発や改良に生かしているという。 また、「キャンパーが800人も集まっている会社なんて世界中で我々ぐらい。キャンプの力を信じている」とし、店舗で接客する際に「他社とは全然違った熱量で」商品やキャンプの魅力を伝えられていることも、ファンの獲得につながっているとの見方を披露。デフレの時期でも高価格帯の商品が受け入れられていることについて、「製品と売り場とイベント、我々のスタッフとユーザーとの絆、そのすべてが合わさって成長率、利益率につながっている」と語る。 一方、今年7月以降は国内の売上高が最大で1割近く前年同月を下回る状況が続く。9月には、山井氏の長女・梨沙氏が既婚男性との交際と妊娠を理由に社長を引責辞任するなど、逆風にも見舞われている。 ■社長交代を陳謝「信頼回復に努める」 梨沙氏の辞任を受け、会長との兼任で社長に復帰した山井氏は、14日に発表した2022年1~9月期決算の会見で社長交代を陳謝した上で、「私が社長に復帰し、全社をあげて信頼回復に努めて社業に励んでいるので、安心していただきたい」と述べた。決算は前年同期と比べ、売上高が24%増の229億円、本業のもうけを示す営業利益が21%増の31億円で、増収増益。国内市場の落ち込みを米国や韓国など海外市場で取り戻している形だ。 キャンプ以外のレジャー需要の回復や円安などによる売上高や利益の減少といった不安要素も漂うが、山井氏は「世界的なキャンプ需要の高さは継続している」とし、現地企業と立ち上げた中国の合弁会社などによって今後の成長に自信を見せる。社長復帰の意気込みを問われると、「少し強めにやらなければいけないのは原点の部分。キャンプ用品の開発とサービスのところをリファイン(改善)することに力点を置きたい」と語った。