「社長の住む街」調査

 社長の住む街のトップは、東京都「港区赤坂」だった。ランキング上位を東京都心が占め、「都心回帰」を反映した。「交通アクセス」や「職住近接」など、利便性重視の傾向もうかがえる。
※本調査は、東京商工リサーチの約245万社の代表者データ(個人企業を含む)から、社長の居住地を抽出しランキングにまとめた。なお社長居住地の最小単位は「町」ベースで、「丁目」の区別はしていない。調査時点は2012年9月。
社長が多く住む街のトップは、東京都「港区赤坂」
 全国約245万社の中で社長が多く住む街のトップは、東京都「港区赤坂」の2,009人となった。江戸時代に町屋、武家屋敷が造られ、多くの大名、旗本屋敷が存在した高台地区は、明治以降は、官吏や軍人、富裕層から成る都心有数の邸宅街へと発展した。さらに昭和30年から昭和55年頃までは、銀座と並ぶ高級繁華街として栄え、外資系企業社員および大使館の駐在員など外国人の多い街として華やかなイメージを醸し出した。
 2007年3月には、防衛庁・檜町駐屯地の跡地にホテル・オフィスビル・住宅・商業施設等からなる「東京ミッドタウン」が開業し、東京の人気スポットとして再浮上した。
 2位は、東京都「渋谷区代々木」の1,747人。明治神宮や代々木公園に隣接し、各国大使館も点在する土地柄で、高台を中心に高級住宅街が形成されている。2000年4月には、都営地下鉄大江戸線「代々木」駅が開設し、交通アクセスが至便となった。
 3位は、東京都「港区高輪」の1,709人。江戸時代は各藩の下屋敷が多く置かれ、明治以降は、皇族、政府高官、財界人の邸宅が建ち並んだ。さらに泉岳寺など由緒ある寺社が点在し、都心の高級住宅街の一つとして知られている。2000年9月の東京メトロ「白金高輪」駅の開設以来、通り沿いにはタワーマンションが目立つようになった。
都心回帰を反映 ランキング上位を都心が占める
 日本の高級住宅地の代名詞といえば、東京都の「大田区田園調布」と「世田谷区成城」だが、
 今回調査では、「田園調布」が6位、「成城」が7位だった。地価下落で、都心部でも住居が購入しやすくなったことを背景として、(1)交通アクセスが良くて職住近接が実現できること、(2)買い物が便利であること、(3)繁華街や文化施設にも近いこと、などを重視する「都心回帰」の動きから、人気エリアに集中がみられるランキングとなったといえる。
「職住近接」の東京都「江東区亀戸」が11位
 このほか、11位が東京都「江東区亀戸」の1,430人だった、学問の神様・亀戸天神で親しまれる亀戸は、住宅・町工場・商店が混在した地区で、「職住近接」の中小企業社長が多い。
 東京都以外では、31位に神奈川県「三浦郡葉山町」の1,032人、葉山御用邸で知られる風光明媚な保養地。著名人の自宅や別荘などが多く、海水浴場や葉山マリーナなどのマリンスポーツ施設がある。
 次に、42位に福岡県「筑紫郡那珂川町」の989人、自然環境に恵まれ、県庁のある福岡市の中心部から至近距離に位置し、至便性が高いベッドタウンとして都市化が進んでいる。67位は、福岡県「糟屋郡志免町」の853人、福岡空港に近く、福岡市のベッドタウンとして住宅が開発された。また2つの工業団地があり、機械、金属工業を中心に従事する人も多い。
 77位は、神奈川県「横浜市青葉区美しが丘」の825人、東急電鉄が開発した多摩田園都市で、街並みの人気が高い住宅地である。
社長の住む街ランキング(町村ベース)
市区郡別、東京都世田谷区が3万4,508人でトップ
 さらに範囲を広げて市区郡別でみると、最多は東京都世田谷区の3万4,508人。次に東京都港区2万868人、東京都大田区2万472人、東京都練馬区1万9,252人、東京都杉並区1万7,378人の順となった。東京都以外では、14位に埼玉県川口市が1万1,679人。15位に鹿児島県鹿児島市が1万839人。18位に兵庫県西宮市が1万26人。19位に町工場が多い大阪府東大阪市の9,666人。21位に千葉県市川市の9,629人。23位に千葉県船橋市の9,485人。24位に石川県金沢市が9,259人となった。
県庁所在地別
 また県庁所在地(東京都を除く)で、社長居住地として多かったのは、鹿児島市、金沢市に続いて、高松市9,005人(25位)、松山市8,798人(27位)、宇都宮市8,596人(29位)、大分市8,116人(35位)、岐阜市7,771人(40位)、富山市7,692人(41位)、長崎市7,138人(45位)、宮崎市7,010人(46位)、奈良市6,376人(51位)の順だった。
社長の住む街ランキング(市区郡ベース)
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 従来、社長の住む街については、大都市に比べて地方都市では特定の居住地に集中する傾向が薄かった。しかし、長引く地価下落の影響から物件が求め易くなったこともあって、地方都市でも県庁所在地を中心に特定地域への集中が目立つようになった。
 さらに今回調査では、東京都心を筆頭に、交通アクセスや、「職住近接」重視の動きもあって、昔からある有名住宅地に混ざり「利便性の高い」地域が目立った。今後も社長が住む街は、「名」より「利便性」を優先する傾向が強まるとみられる。

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