「神的存在」のサイト乱立、相次ぐ違法ダウンロード

レコード各社が「チューブファイア」への集団提訴に踏み切った背景には、CDやDVDの売り上げを圧迫している無料ダウンロード(DL)の広がりに対する業界の危機感がある。チューブファイアはすでにサービスを停止しているが、インターネット上には同種のサイトが乱立し、音楽動画などを無料でDLできる状態が続いている。
 「貧乏人にとっては『神的存在』なのに…」「おすすめの(別のサイト)があったら教えて」。チューブファイアの利用停止後、ネット上の質問サイトには、こんな書き込みが相次いだ。チューブファイアと同種のサービスを「おすすめ」する書き込みもあり、無料DLが横行している実態を示している。
 日本レコード協会によると、これらのサイトを介した音楽作品の「不正なDL」は年間約12億件(推計値)。一方で、平成22年にパソコンを使って正規にDLされた音楽作品は4億4千万件にとどまる。同協会は「不正DLが、CDの売り上げやレンタルなどにマイナスの影響を与えている」としている。
 レコード会社側は訴訟で「DLは著作権者の許諾を得ない『複製』にあたる」と主張。チューブファイアを介して「約1万ファイルが無許諾で複製されていることを確認した」として賠償を求めた。
 だが、甲南大学法科大学院の園田寿教授(ネットワーク犯罪)は「サイト(チューブファイア)を一概に違法と言い切ることはできない」とみる。ファイル共有ソフト「ウィニー」の開発者が著作権法違反の幇助(ほうじょ)罪に問われた事件の裁判では「ソフトの技術自体は有意義」と認定され、無罪判決も出ているためだ。
 ただ、著作権法改正で昨年1月からは違法にネット上に公開された動画などをDLした場合、DLした利用者も違法性を問われるようになった。園田教授は「レコード会社がプロモーション用に配信した動画であれば『私的利用』と認められる可能性があるが、違法に公開された動画には注意が必要だ」と述べた。

タイトルとURLをコピーしました