携帯電話主要3キャリア各社の冬春商戦に向けた新製品やサービスが出そろった。今回の注目の的は、やはりスマートフォンであるのは間違いなさそうだ。スマートフォンのラインアップやサービス、料金施策などから、NTTドコモ、au、ソフトバンクモバイルのスマートフォン戦略にどのような違いがあるのかを比較してみたい。
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【NTTドコモ】豊富な端末バリエーションで全方位戦略を採用
NTTドコモが今冬以降に投入するスマートフォンは、すでに発売が始まった「GALAXY S SC-02B」に加え、先日発表された「LYNX 3D SH-03C」「REGZA Phone T-01C」「Optimus chat L-04C」のAndroid搭載機4機種、BlackBerryの新機種「BlackBerry Curve 9300」の計5機種で構成される。タブレット型のAndroid搭載機「GALAXY Tab SC-01C」と電子書籍端末の「SH-07C」を含めると、合計で7機種になる。
このうちSH-03CとT-01Cは、ワンセグやFeliCa、赤外線など日本の携帯電話でおなじみの機能を搭載した“日本仕様”の機種となる。SC- 01BとL-04Cの2機種はこうした機能は搭載していないものの、Androidの最新バージョン「Android 2.2」を採用しているのが特徴だ。形状についても、スライド式のQWERTYキーボードを搭載するL-04Cを用意し、フルタッチスタイル以外のバリエーションも広げている。
サービス面では、スマートフォン利用者にも人気のクラウドメモサービス「Evernote」が大きな特色となる。すべてのAndroid搭載機種に、 Evernoteをインストールするためのアプリケーションがプリインストールされる。しかも、Android搭載機種の全ユーザーに対し、本来有料となるプレミアム版のサービスを1年間無料で提供するというキャンペーンも用意する。一方、iモード向けのコンテンツをスマートフォンに移行しやすい仕組みを整えることを発表するなど、現在の携帯電話利用者に向けたコンテンツ施策も進めていく方針だ。
端末面では、日本仕様や最新OS搭載モデル、タブレットデバイスやBlackBerryと、幅広いバリエーションをそろえる。一方で、コンテンツ面では Evernoteで先進層へアピールしつつ、「spモードメール」や「ドコモマーケット」などの強化で携帯電話ユーザーへの施策を進めている。かつての携帯電話の時と同様に“全方位”でユーザーを囲い込む戦略を取っているといえよう。
【au】“日本仕様“と“Skype au”で携帯ユーザーを取り込む
スマートフォンで出遅れた印象の強かったauだが、この冬商戦では巻き返しを図るべく、端末やサービスでさまざまな施策を打ち出している。
端末面では、先行して発表がなされた「IS03」をはじめ、「REGZA Phone IS04」「IS05」と、ワンセグやFeliCaなどの日本仕様に対応させた機種を3機種も投入。一方で、Android 2.2を搭載した「Siriusα IS06」も投入するなど、先端ユーザーへのアピールも欠かしていない。端末数は4つと少ないが(3G通信機能を搭載しないタブレット端末「SMT- i9100」は含めず)、他のキャリアと比べて日本仕様を盛り込んだ端末数が多いのが特徴と言えるだろう。
サービス面でも、携帯電話で提供してきたサービスのスマートフォン対応を積極的に進める。「LISMO」「EZナビウォーク」などに加え、新たに「au Smart Sports」「じぶん銀行」「au one ニュースEX」などの提供も始める。スマートフォン向けの着せ替えサービス「きせかえtouch」など、携帯電話ユーザーに配慮したスマートフォン向けサービスも用意する周到ぶりだ。
そしてもう1つ、サービス面で大きなポイントとなるのが「Skype au」だ。パソコンなどで人気のインターネット電話サービス「Skype」のau版で、auのAndroid搭載スマートフォンに専用のアプリケーションを提供する。通常はデータ通信で実施するSkypeの音声通話を、auの電話回線を用いて実現する形となり、クリアな音質で通話できるのが特徴だ。気になる通話料は、Skype au同士、あるいはSkype相手との通話は無料に設定される(2011年11月30日までの限定)。SkypeOutによる海外への固定・携帯電話への通話はSkypeの料金に準じるが、国内の固定・携帯電話への発信はできない制約がある。
日本仕様のスマートフォン比率の高さに加え、auの各種サービスの移植を積極的に進めている点から、auのスマートフォン戦略は現在の携帯電話ユーザーに対して強く訴えかけることが主体となっている。加えて“禁断”とされてきたSkype auの提供により、お得感や革新性もアピールしていく方針のようだ。
【ソフトバンクモバイル】最先端の機能とサービスで先進層に訴えかける
iPhoneの提供により、スマートフォン市場をリードするソフトバンクモバイル。同社は、Androidスマートフォンの端末数やサービスを大幅に増やすことで、スマートフォンに注力する姿勢を取る。
端末のラインアップは、裸眼による3D表示が可能でワンセグやFeliCaなどに対応した「GALAPAGOS 003SH」「GALAPAGOS 005SH」の2機種と、先行して発表された4.3型の大型ディスプレイ搭載の「HTC Desire HD 001HT」、そしてコンパクト・低価格となる「004HW」「Libero 003HW」の5つ。小型のタブレット端末「DELL Streak 001DL」を加えると、計6機種が投入されることになる。
これらの大きな特徴は、全機種がAndroid 2.2を搭載して先進性を強く意識していることだ(うち、フルバージョンのFlash Playerが利用可能なのは4機種)。海外メーカーの端末比率が高いのも特徴で、いち早く最新の環境を利用したいユーザーを強く意識している。
サービス面でも、電子書籍サービスの「ビューン」「ソフトバンク ブックストア」、動画配信の「ビデオストア」や「Ustream」の3D表示対応、そしてmixiと連携した「ソーシャルフォン」の提供など、スマートフォン利用者を意識したサービスを充実させている。課金面でも、Androidマーケットのキャリア決済に対応するなど、他社と異なりAndroidの環境を生かすことに力を入れているようだ。
こうした内容から見えてくるのは、現在スマートフォン市場を支える先進層に向けたアピールをより強化したことだ。電子書籍や動画配信、3Dなど話題のサービスを次々と投入するだけでなく、Androidに関しても最新版の提供を特に重視している。独自のマーケットを設けず、標準のAndroidマーケットへの対応を強化するなど、スマートフォンらしい最先端のサービス・環境を使いたいユーザーに強く訴えかける内容になっている。
料金施策に見る、スマートフォンへの意気込み度合いの違い
端末やサービスも重要だが、スマートフォンを利用するうえで最も重要となるのは、やはり端末代金や毎月支払う通話・通信料などの“料金”ではないだろうか。各社の料金施策から、今冬商戦におけるスマートフォン販売への力の入れ具合の違いを見てみよう。
まずNTTドコモだが、今回の冬商戦において新たな料金施策は特に発表していないが、現在「スマートフォン スマートプライスキャンペーン」を展開しているのがトピックだ(12月31日まで)。これを利用すると、インターネット接続に必要な「spモード」の利用料(月額315円)が最大半年間無料となるほか、SC-02Bなどキャンペーン対象の機種は特定の条件を満たして購入することで、機種に応じて料金の割引が受けられる「プラス割」が適用できる。
auは、IS03の提供に合わせて新たにいくつかの料金施策を打ち出している。1つは、月額5460円で利用できるパケット定額オプション「ISフラット」で、「ダブル定額スーパーライト」などをスマートフォンで利用した時の上限(5985円)より安くなる。もう1つは、一定料金を毎月の利用料金から割り引くスマートフォン向け割引サービス「毎月割」。ソフトバンクモバイルの「月月割」に相当するサービスといえる。機種によって金額は変わり、IS03の場合は毎月の割引額が1500円で、総額で最大3万6000円の割引を予定しているという。
ソフトバンクモバイルは、11月12日から新しいパケット定額オプション「パケットし放題S for スマートフォン」(月額390~5985円)を提供する。2011年4月31までの期間限定オプションとして、約712万パケット(約869MB)まで 3985円(上限は5985円)で利用できる「パケットし放題MAX forスマートフォン」も用意するのがユニークだ。ただ、同社はiPhone向けにパケット代上限が4410円で利用できるオプションを用意しており、 iPhoneと比べるとやや割高感がある。
各社の料金施策を見ると、「大きな変更はなく現行の施策を推し進めるNTTドコモ」、「スマートフォンの本格投入に合わせて多くの施策を打ち出す au」、「さまざまな施策を打ち出してはいるが、iPhone重視の姿勢を崩さないソフトバンクモバイル」という各社の傾向が見て取れる。スマートフォンの出遅れを取り戻したいauが、料金施策でも積極的に動いているといえそうだ。
今商戦では各社とも大幅にスマートフォン戦略の強化を進めてきたが、各社とも継続してスマートフォンを強化する方針を発表している。それゆえ今回の施策に限らず、今後さまざまな端末やサービス、キャンペーン施策が展開されるものと考えられる。本格的なスマートフォン競争に向けた各社の取り組みにぜひ注目したい。
(文・写真/佐野正弘)