知られざる「節約女子」の実態を紹介したい。
まずは、全体のトレンドを見てみよう。紹介するのは、前述の記事を作成した際に、アンケート調査会社リビジェンの協力のもと、全国の20~30代の女性200人(既婚・未婚)に対して行った「日々の生活で節約しているものは何ですか?」という質問に対する回答結果である。「複数回答可」という条件で節約しているものを具体的に挙げてもらったところ、742の回答を得た(下のグラフ参照/総回答数に対する割合)。
「節 約しているもの」として女性たちが挙げたものを見ると、「食費(食料購入費、外食費など)」が最も多く全体の17.1%。次いで「服・くつ代」 (14.7%)、「美容代」(13.3%)が多かった。「レジャー代」(8.4%)、「交通費」(8.2%)の割合も多かったことから、やはり女性は生活 必需品よりも、おしゃれや交際費にかけるお金が比較的多く、いざコストカットとなると、それらを優先的に節約する傾向があるようだ。また、「食費」の節約 が最も多かったことについては、節食はダイエットにつながることから、服やくつにかけるお金を節約しなければならないぶん、「せめてタダでできる美容法を 実践しよう」という女心の表れとも考えられる。
それでは、具体的に女性たちはどんな節約術を駆使しているのか。筆者が周囲の女性たちに対して独自に行った聞き取り調査の結果を、お伝えしよう。
飲み物はコンビニではなくスーパーで弁当の代わりに職場へもやしを持参
まずは、食費に関するものから見ていこう。
「昼食のカップ麺はコンビニで買わず、スーパーでまとめ買いして会社に置いておく」(25歳・会社員)
「コンビニや自販機でジュースやお茶を買わない。買うならスーパーで!」(30歳・専業主婦)
コンビニは24時間利用することができ、レジまでの距離もスーパーより近いため、時間がないときにも便利。ついつい利用してしまいがちになるが、価格は スーパーより割高だ。ほんの数円、数十円ではあっても、コンビニでの買い物がクセになっているようでは、節約しているとは言えないのだろう。
「カレールーやツナ缶、スパゲティ、スパゲティソース、マヨネーズ、ケチャップ、ソース、醤油など保存がきく食材は特売のときにまとめて買う。常にストックを欠かさないようにする」(35歳・専業主婦)
「食費は1日300円と決める。3軒のスーパーをまわり、安いものを買う。お腹が空いているときはスーパーへ行かない。つい買ってしまうから」(29歳・会社員)
スーパーでの買い物にも、節約のための手間と労力をいとわない。食品の消費量が多いファミリーの場合、食材の無駄は痛い出費になる。
「ご飯は圧力鍋で炊く。早く炊けるので炊飯器より経済的」(35歳・専業主婦)
「庭で野菜を育てる」(33歳・自営業)
「一 番お金がなかったころはお弁当もつくれず、会社にもやしを一袋持って行って、給湯器のお湯で温め、塩をかけて食べていた。学生時代はキャベツの千切りを弁 当箱に二段詰めて持って行って学食のドレッシングを借りていたが、社会人になってから安月給でとうとうキャベツも買えなくなった」(29歳・自営業)
「お弁当は冷凍食品の詰め合わせ。数種類のおかずを作るために食材を買ったりガス調理したりすることを考えると、冷食を3~4種類入れた方が安上がり」(25歳・会社員)
「お かずは、ゆでブロッコリーと出し巻き卵と魚肉ソーセージのケチャップ炒め。毎回この献立。魚肉ソーセージは安くて食べ応えがあるし、ケチャップで炒めると 本当においしくなるので全然飽きません。お金がないとお肉が食べられないけれど、がっつりしたものを食べたいときは、油揚げをこんがり焼いてしょう油で食 べていました」(31歳・会社員)
調理方法の中で涙ぐましい努力を感じるのが、お弁当に関するもの。ランチを外食すれば、最低でもワンコ インはかかってしまう。しかし、忙しい毎日の中でなかなか手の込んだものもつくれないし、1人暮らしの場合、食材を使い切れずに腐らせてしまうこともあ る。冷凍食品のお弁当について、「料理の1つもつくれないのか」と眉をひそめる向きもあるかもしれないが、これも考えた末の生活の知恵なのだ。
中には次のような意見も。
「お寿司、焼肉、すき焼きなどは実家におねだりしてご馳走になる」(34歳・専業主婦)
右肩上がりの経済成長とは縁遠い、今の子育て世代。年金がもらえる親世代の恩恵を今のうちに受けておこうと思う女性や、たまの「ご馳走」を通して子ども世帯を援助しようとする親は、少なくないのではなかろうか。
シャワーのお湯をトイレにも使用電気代節約のためテレビを売った
水道・光熱費に関する節約術はどうだろう。
「ユニットバスだったころ、水道代を節約するために、シャワーを浴びながらお湯をためて、溜まったお湯はトイレや洗濯に使っていた」(35歳・会社員)
「お風呂は冷めないうちに家族が続けて入るようにする。パンを食べたお皿やお茶を飲んだコップなど汚れが少ないものは、その都度アクリルたわしをつかってお湯洗いする。その他の食器洗いはつけおきしておいて、1日の終わりにまとめて食洗機で洗う」(33歳・専業主婦)
「水を入れたペットボトル(1.5Lなど)をタンクに入れておくと、そのぶん体積をかせぐことができるので、流れる水の量を減らせる」(25歳・会社員)
あまりに節約すると衛生面で問題がありそうな水道費。特にトイレの水量を減らし過ぎると、故障トラブルが心配なところではあるが……。
「暖房の設定温度をぎりぎりまで下げる」(29歳・会社員)
「冬はできるだけ暖房を使わずに、着こみまくる」(35歳・会社員)
「暖房代を考えて遮熱保湿カーテンを使用」(23歳・会社員)
「ドライヤー短縮のために速乾性の吸水タオルを使っています」(22歳・会社員)
「家を空けるときは一部家具のコンセントを抜いていく。あると使ってしまうのでテレビは売った。夜はパソコンの灯りだけで過ごすので、照明はつけない」(33歳・自営業)
話を聞いた女性たちが、異口同音に「こんなことは誰でもやっていると思うけれど……」と言っていたのが印象的だった。暖房をつけずに着込むという簡単な節 約法だけでなく、手間となるコンセントを毎回抜くという節約方法も、複数の人から回答を得た。「テレビを売った」というコメントも同様に、複数の人から聞 いた。パソコンやスマホが必須の時代、削れるものはむしろテレビということなのだろうか。
スマホのフリマアプリで小遣い稼ぎお金がかかる子連れでの外出はおやつを持参
子どもの養育費に関する節約法も。
「子どもの服はほぼ1年でサイズアウトするので、お下がりをもらったり、フリマアプリを利用する。サイズアウトしたものは再びフリマアプリなどに出品したり、リサイクルショップに持っていく。シーズン終わりのセール時に来シーズンに着るワンサイズ上の服を買っておく」
フリマアプリとは、ユーザー同士で古着の売買を行うことができるスマートフォンアプリで、主婦の間で人気が高い。フリーマーケット(フリマ)をスマホ上で 行う感覚のものだ。リアルなフリマは実際に商品を手に取れるという利点があるが、売る側からすると一定量の商品が必要であり、人気のフリマでは出品の申し 込みに応募が殺到してしまうこともある。スマホで操作でき、少ない点数から出品できる手軽さが受けている。節約というよりも、「ちょっとしたお小遣い稼 ぎ」になる楽しさがある。
「児童手当のように本来の収入ではないものは、将来のために貯蓄しておく。また、子どもは自動販売機を見ると喉が渇き、コンビニを見るとハイチュウが食べたくなる不思議な生き物なので、子連れで外出の際はなるべく飲み物やおやつを持参する」(34歳・専業主婦)
子どもが何かを欲しがって駄々をこねるとき、毎回我慢をさせるのも一苦労であり、つい「数百円だから買ってあげよう」と思いがちだ。しかし節約目線で考えると、数百円の積み重ねが大きいのだろう。
また、子ども服だけではなく、「自分の洋服や家具・家電を不用品売買サイトで安く購入したり、オークションサイトで競り落とす」という意見もあった。「家 具を買うのがもったいないので、ダンボールを再利用して棚を作った」(35歳・会社員)という人もいるように、ハンドメイドは節約の友だ。
美容院の「キャッチ」で髪を切るお金がないと友達に誘われなくなる
美容や服飾費、また交際費について挙がったのは、次のような節約法。
「節約のためにマスカラをやめた」(35歳・専業主婦)
「自分の持っている服を撮影、管理していたことがあります。 何色系が多いのか、買っている服の傾向がわかり、服の衝動買いが減り、購入時に『これと似たやつ持ってる』となって、無駄買いが減りました」(32歳・会社員)
「毛玉でワンシーズンしか着れないので、アクリルとポリエステルのセーターは極力買わない」(29歳・会社員)
セールを賢く利用するのは当たり前。自分の買い物傾向や、利用状況を考えて「長く着られないものを選ばない」ことが大事なポイントのようだ。
「節約のためにシャンプーを薄めて使う人がいると思いますが、化粧水を薄めて使っていたことがあります」(24歳・会社員)
「若いのをいいことに、20代の頃は化粧水は100円均一でした。美容院のキャッチには進んで自分からつかまって、髪を切ってもらっていました」(33歳・会社員)
「美容院のキャッチ」とは、美容師が練習するためのカットモデルを路上でスカウトすること。キャッチが多い場所を覚えておいて、髪を切りたくなったらその周辺を歩く……という女性もいる。ただし、練習台なので自分の好きな髪型は選べない。
「飲み会に行く回数を制限している」(33歳・会社員)
「友達に『お金がない』と正直に言う。そうするとお金のかかる遊びに誘われなくなる。電車に乗る日は、一番安い乗り方を調べる。2~3駅程度は歩く」(30歳・会社員)
見栄を張ってしまえば、それだけお金がかかるもの。素直に「お金がない」「節約したい」と言っておくのもひとつの手。あまり言いすぎると「ケチ」と敬遠さ れてしまいそうではあるが、「結婚式や誕生日のお祝いはケチらずに、しっかりお祝いすることでバランスを取る」(30歳・会社員)という意識も大切だ。
いかがだろうか。思わず微笑んでしまうものから、「そこまでして大丈夫?」と心配になるものまで、世の女性たちがやっている節約術は想像以上に細かく、多岐にわたる。彼女たちの姿からは「極限生活」と呼ぶにふさわしいケースも垣間見える。
男女問わず、節約が苦手な人たちは、この機に「節約女子」たちの生き方から教訓を得る必要がありそうだ。それにしても、世に「節約女子」はどれだけ増えて行くのだろうか。こうした社会情勢こそ、真に議論されなければいけないことではある。