北朝鮮メディアが、韓国の文在寅政権への圧迫を強めている。
対韓国宣伝サイトの「ウリミンジョクキリ(わが民族同士)」は25日付の論評で、「南朝鮮の当局者たちが『制裁の枠組み』の中での協力交流うんぬんと言うのは北南宣言に合意した当事者として約束も、義務も、礼儀も捨てた態度」であると非難。さらに、「北南合意の精神にも反する無責任な行動」と切って捨てた。
北朝鮮は、これまでにも様々な表現で韓国を非難してきたが、この論評は特に強い調子と言える。また、27日付の論評では、次のように主張している。
「今は外勢の顔色をうかがいながら、優柔不断に対面維持をするときではなく、民族自主の精神をもって、これまでにも増して北南関係の発展と朝鮮半島の平和と安全のために努力すべきときなのだ」
ここに出てくる「外勢」とは言うまでもなく、米国のことだ。
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韓国政府は北朝鮮への800万ドルの人道支援を決定したが、実施は先延ばしになっている。また、北朝鮮をあやすために、開城工業団地と金剛山観光の再開を目指しているものの、実現はおぼつかない。
いずれも、理屈の上では韓国独自の判断で実行する余地のある問題だ。しかし、出来ない。米国が「よし」と言ってくれないからだ。北朝鮮問題を巡る米韓の不協和音は、以前からあった。そして、それはハノイでの2回目の米朝首脳会談が決裂して以降、深刻さを増している。
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北朝鮮はそれを知っていながら、揺さぶりをかけているのだ。北朝鮮の崔善姫(チェ・ソニ)外務次官は平壌で開いた記者会見で、米朝の「仲裁者」を自任する文在寅氏のハシゴをあっさり外して見せた。
それでいながら宣伝メディアでは、「米国に物を言えるものなら、言ってみろ」と要求しているわけだ。
この状況は北朝鮮にとって、失うもののない、極めて有利な状況だ。韓国が誘いに乗り、開城工業団地や金剛山観光に乗り出せば、貴重な外貨が得られる。また韓国が乗って来ずとも、「お前たちは約束を守らなかった」として「貸し」を作ることができる。最近になって、またもや北朝鮮の人権問題がクローズアップされそうな雰囲気が出てきていることを鑑みれば、韓国に「貸し」を作り、口を封じて置くことの意味は小さくない。
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文在寅政権はいよいよ窮地に追い込まれつつあるが、北朝鮮にとってそれは「好機」でもあるわけだ。
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