「納豆不毛の地」関西を開拓 ミツカン、におい抑え、種類豊富なタレで

食酢最大手のミツカングループ本社(愛知県半田市)が、業界で「納豆不毛の地」と呼ばれる関西市場の攻略に乗り出している。大阪の老舗、旭松食品の納豆「なっとういち」ブランドを今春買収したほか、においを抑えたり、タレの種類を豊富にそろえるなど関西人の好みに合わせた商品を投入。食わず嫌いの消費者を掘り起こし、納豆ファンを増やしている。
 ミツカンは平成9年納豆事業に参入。納豆特有のにおいを抑えた「におわなっとう」や、手が汚れないようゼリー状にしたタレを添付した納豆など、独自商品を開発しシェア2位に躍進した。関西市場の開拓で、おかめ納豆」で知られる首位のタカノフーズ(茨城県小美玉市)を追走する。
 関西納豆市場の特徴は、何といっても「におい控えめ」が受けること。売上げ構成では、西日本ではにおいを抑えた「ライト系」が7割を占める。ミツカンはニーズに対応し、西日本では、におわないタイプを集中的に投入している。
 関西では、商品開発で思い切った挑戦ができるのも特徴という。「東では濃いしょうゆ味のタレを使う伝統が崩れないが、西は納豆への思い込みが少なく、新しいものに抵抗感がない」(ミツカン製品企画部)からだ。そこで、黒酢風味、かつお風味、さらには卵黄入りと、バラエティ豊かなタレをそろえた。変わり種タレ付き商品の関西での販売比率は、関東の3倍にのぼるという。
 ミツカンは、関西でなじみの深いブランド「なっとういち」を4月に旭松食品から受け継いだことに伴い、西日本でシェアトップに躍り出た。西日本で初の生産拠点となる三木工場(兵庫県三木市)も19年から稼働させた。
 総務省の家計調査(22年)によると、大阪市の1世帯あたりの納豆消費額は1940円。トップの福島市(5612円)の3分の1程度だ。全国納豆協同組合連合会の調査では「週に1日以上食べる」は北海道、東北で約8割に対し、近畿、中四国は約5割。
 それでも、製品企画部の吉永智征課長は「むしろ伸びしろは大きい。においの薄い納豆を入り口に『濃い』納豆の味わい深さもアピールする」と関西市場攻略に自信を示す。西日本を中心に、国内の市場規模を1割伸ばすことが目標だ。頭打ちの納豆市場を西日本から打ち破るか、同社の“粘り”が注目されそうだ。

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