「緊急宣言よりマスク」社会損失抑制に効果 東北大准教授が論考

新型コロナウイルス対策は感染者の増加後に緊急事態宣言などを出すよりも、マスク装着を求めるなどの社会的介入で感染者数を一定に保つ方が社会の経済的負担が軽い―。こんな論考を東北大大学院理学研究科の本堂毅准教授(科学技術社会論)が日本物理学会誌に発表した。

理論物理学の手法で解析

 シミュレーションで感染症対策を分析する従来の手法では国や地域、特定の感染状況に影響され、一般性や普遍性のある結論を導けなかった。このため、本堂准教授は経済学の費用便益分析と理論疫学の感染モデルの基礎だけを使い、理論物理学の手法で解析した。

 その結果、いったん増えた感染者を時短営業や行動変容を求める強い対策で以前の状態に戻すことは、一定数の感染者を保ち続けることに比べ、医療の負担や感染者が被る損失が大きいことが分かった。感染者が増え続ける状況で対策を先送りすると、社会的損害が増大することも判明した。

 本堂准教授は「時短営業や行動変容などのマクロ対策より、不織布マスクの適切な装着や常時換気の徹底といったミクロ対策を優先させることの重要性が示された。将来の新たな感染症にも適用できる知見だ」と話す。

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