「老舗企業」は全国に約3万3000社

“企業長寿大国”である日本。世界と比べて、日本には業歴の長い企業が多く存在し、毎年1000社以上の企業が創業100周年を迎えている。第二次世界大戦といった“戦争”、バブル崩壊やリーマン・ショックなどの“金融・経済危機”、阪神淡路大震災・東日本大震災といった“災害”など、老舗企業には幾多の困難を乗り越えてきた強さがあり、企業理念や経営方針、危機管理対策には、学ぶべき点が多くある。

 帝国データバンクは2018年11月時点の企業概要データベース「COSMOS2」(約147万社収録)に収録されている老舗企業(個人経営、特殊法人等含む)を抽出し、業種別、年商規模別、都道府県別に集計、分析した。

※本調査では、業歴100年以上の企業を老舗企業と定義老舗企業数

 2019年中に業歴100年となる企業を含めた「老舗企業」は全国に3万3259社存在することが判明し、老舗企業の全体に占める割合(老舗企業出現率)は2.27%となった。また2019年に業歴100年を迎え、新たに「老舗企業」の仲間入りを果たした企業は1685社を数える。帝国データバンクが2016年に発表した同様の調査では業歴100年以上の「老舗企業」は2万8972社判明しており、3年間で4287社増加した。

 老舗企業のうち、上場企業は532社判明。1586年に創業した建築工事を主業とする松井建設(株)や、1602年に創業した薬用酒メーカーの養命酒製造(株)、1691年に住友家の別子銅山開坑に伴い発足した住友林業(株)などが並ぶ。

業種別 業種別

 業種大分類別に見ると、老舗企業の社数が最も多かったのは、「製造業」の8344社(構成比25.1%)となり、「小売業」(7782社、同23.4%)、「卸売業」(7359社、同22.1%)が続いた。この3業種で老舗企業全体の約7割を占めている。

 業種を細分類別に見ると、「貸事務所」(894社)がトップとなった。創業時は別事業を主業としていた企業が、所有する土地にオフィスビルなどを建て、賃料収入が増加し、貸事務所業へと業種が変わったケースが多い。

 2位は「清酒製造」(801社)。清酒は1300年前から日本に存在していたと伝えられており、古くから定着している産業のひとつとなっている。

 その他、「旅館・ホテル」(618社)や「酒小売」(611社)、「呉服・服地小売」(568社)、「婦人・子供服小売」(535社)など、BtoC関連の業種が上位を占めた。

年商規模別 年商規模別

 年商規模別に見ると、老舗企業数が最も多かったのは「1億円未満」(1万3786社)で、「1億~10億円未満」(1万2986社)がこれに続く。

 老舗企業出現率では、「1億円未満」が1.69%となった一方、「500億円以上」が15.05%と最も高い結果となった。年商規模が大きい企業では老舗企業の割合が高い。

都道府県別 都道府県別

 都道府県別に見ると、社数では東京都(3363社)がトップ。老舗企業出現率が最も高かったのは「京都府」の4.73%。京都府は伝統工芸を守り育てる土壌があったことなどが、呉服を扱う企業や、寺社仏閣の改築を手がける老舗企業の存続に大きく寄与した。次いで、「山形県」(4.68%)、「新潟県」(4.29%)、「島根県」(4.03%)など、“酒どころ”が上位に入った。

主な老舗上場企業 まとめ

 調査の結果、業歴100年以上の「老舗企業」は全国に3万3259社存在することが分かった。このうち上場企業は532社判明し、また2019年に業歴100年を迎え、新たに「老舗企業」の仲間入りを果たした企業は1685社となった。

 戦争や経済危機、災害を乗り越え、企業を存続させることは容易ではない。老舗企業の中には、100年以上の歴史の中で成功や失敗を繰り返し、その過程で業態を変えた企業も見受けられる。また帝国データバンクの調査では、老舗企業は特にBCP策定率が高いことが判明しており、危機意識が高いことも老舗企業の特徴の一つだろう。

 今年は“平成”という一つの時代が終わり、新たな時代の幕が開ける。時代の変化に対応するお手本として、「老舗企業」から学ぶことは多いのではないだろうか。

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