「耐震スリットあるかのよう」清水建設マンション欠陥問題、震災時の報告書は間違いだらけ

大手ゼネコンの清水建設が仙台市中心部で施工したマンションに建築基準法が求める耐震スリットが1割しか入っていなかった問題で、同社が東日本大震災の被害調査をした際、実態と懸け離れた間違いだらけの報告書を住民側に出していたことが11日、河北新報の取材で分かった。住民からは虚偽報告を疑う声が上がっている。

住民から虚偽報告疑う声

 清水建設東北支店は2011年6月30日、管理組合に「外壁耐震スリットについてのご報告」と題した震災被害の調査結果を示す文書を提出した。「スリットの機能は維持されたと考えます」「スリット材にも損傷は見られませんでした」と報告した。

 添付された図面によると「スリット周囲ひび割れ」が96カ所、「スリット部外装剥離・スリット露出」が25カ所、「スリット最下部周囲損傷」が9カ所などと記されていた。

 調査はスリット周辺を100カ所以上調べたにもかかわらず、欠損や不備を見逃し、問題がないかのように報告したことになる。スリット不足を故意に隠したか、調査能力がなかったかは不明だ。

 住民は「存在しないスリットを『剥離』や『露出』と実在するかのように報告している。住民に真意を伝える意思がなかったのではないか」といぶかしむ。

 6月に東北支店とAMT1級建築士事務所(東京)などが共同で実施した調査では、抽出した85カ所のうち、正確に設置されていたのは8カ所だけで、74カ所にスリットがなく、3カ所に不良施工が見つかった。

 耐震スリットは、地震の揺れで建物を損傷させないために柱と壁を構造的に切り離す2~5センチ程度の隙間(スリット)を指す。スリットには緩衝の役割を果たす発泡ポリエチレン材などが使われる。

 清水建設は建築確認を取った際にスリットを敷設することを明記しており、スリット不足は建築基準法に違反する公算が大きい。

 清水建設の担当者は「震災後、膨大な数の調査依頼があった。スピード感をもって対応するため、図面をベースにした調査になった。調査はスリットがある前提の目視だった。結果的に、恥ずかしいとしか言いようがない」と話した。

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