前を走る車との位置関係を把握し、衝突の危険が高まると自動でブレーキをかけるシステムが、高級車だけでなく低価格帯の車でも搭載されるようになってきた。登場から10年余りを経て普及が進んだ結果、開発や製造のコストが安くなったためだ。部品メーカーの共同開発も活発化しており、さらに身近なものとなりそうだ。
自動ブレーキシステムが初めて導入されたのは、平成15年6月発売のホンダの高級セダン「インスパイア」だ。以降は高級車を中心に搭載されていたが、昨年12月発売のダイハツ工業の新型「ムーブ」(107万円~)が低価格化への道筋をつけた。
同車のシステム「スマートアシスト」は、時速4~30キロで走行中に前方20メートル以内の車を赤外線レーザーレーダーで検知し、衝突の危険性が高まると緊急ブレーキを作動させる。システム価格は、それまでの半分以下の5万円とリーズナブルなことが最大の特徴だ。
同社によると、11月までにムーブを買った人のうち7割がスマートアシスト搭載を選んだ。8月発売の「イース」で7割、10月発売の「タント」では9割に達した。
これに対し、スズキは今夏、「ワゴンR」(110万9850円~)と「スペーシア」(122万8500円~)で「レーダーブレーキサポート」の搭載を始めた。価格はダイハツを下回る4万2千円で、「2車種を購入した人のうち、半数が選んでいる」(同社広報)という。
こうした中、システムの高精度化も進む。自動車用電子機器メーカーの富士通テン(神戸市兵庫区)と、仏自動車部品メーカーのヴァレオは11月、センサーの開発で提携を始めた。富士通テンは、赤外線より長い距離で使用できて天候に左右されにくい「ミリ波レーダー」を開発。ヴァレオは車載カメラが得意分野だ。富士通テンの広報担当者は「2社の連携でコストダウンも見込める。多くの乗用車への普及が期待できる」と話している。
一方、自動ブレーキシステムをめぐっては、11月は埼玉県深谷市の自動車販売店で、マツダ車が障害物に見立てたマットの前で停止せず、男性2人が負傷する衝突事故があった。自動ブレーキが作動しない時速30キロ超で走行していた可能性があり、各メーカーは「あくまで補助的な機能」として、安全運転を呼びかけている。