「自粛警察」なぜ消えた?=専門家、罰則導入で再燃懸念―緊急事態宣言

昨年の緊急事態宣言時に話題となり、流行語にもなった「自粛警察」。政府や自治体の要請に反して外出する人や営業する店舗を過度に批判したり、嫌がらせをしたりする人たちを指した造語だが、今回の緊急事態宣言では鳴りを潜めたように見える。専門家は「正義に自信がなくなったことにある」と背景を分析する。

 昨年は、既に休業していた店舗にまで「オミセシメロ」との貼り紙がされたり、県外ナンバーの車が傷つけられたりした。営業中のスポーツクラブのドアを蹴り壊して、男が器物損壊容疑で逮捕されたこともあった。

 個人と社会の関係などを研究する同志社大の太田肇教授(組織論)は、「振りかざした正義が批判された人たちは、多くの人の支持を得られなかったと自信を失い、同時に多様な価値観を学んで減っていった」と推測する。

 再度の緊急事態宣言発令後も自粛警察が表面化しない理由は、「ルールとなる自粛の基準が曖昧な上、要請に従わない人が多く、正義への自信が持てないままになっている」と分析。新型コロナウイルスへの理解が進み、漠然としていた感染への恐怖や不安が薄らいだことも要因として指摘した。

 新潟青陵大大学院の碓井真史教授(社会心理学)は、休業要請に応じない事業者などへの罰則検討の影響を挙げる。罰則化の議論により、自粛警察は自身の気持ちが理解されたように感じ、怒りが緩和されて減少したという考え方だ。ただ、実際に罰則が導入された場合には、「法律ができても取り締まられなければ、『自分が裁くしかない』とまた増えてくるかもしれない」と危惧する。

 碓井氏は、善意の思い込みと不安が強く、行動力のある人ほど自粛警察化する恐れがあると指摘。「衝動的にならないよう冷静に行動してほしい。人権を侵害するような私刑はあってはならない」と訴えた。

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