毎年のように過去最高を更新している訪日外国人観光客。今年はラグビーW杯、来年は東京オリンピックも開催され、その数はさらに増加していきそうだ。しかし、その一方で文化の違いに起因するトラブルも発生している。そのひとつが所謂「ハラスメント」だ。
◆言葉が通じないだろうと堂々とセクハラ
特に多いのは、やはり性的なもの。今では日本でもだいぶセクハラに対しての意識は高まってきたが、相手が外国人だと気が緩むのか、普通であれば考えられないような発言をする人もいるようだ。
「バーで飲んでいたら、隣の席に座っていたサラリーマングループが、ずっと私の胸について話しているんです。私は日本語を話すのは苦手ですが、聞けばおおよそ何の話をしているかはわかります。どうせ通じないだろうと思っていたのか、『あのコ、超オッパイ大きいじゃん。ヤバいね』と大声で話していて、怖くなりました」(人・35歳・女性)
たとえ彼女に日本語が通じなかったとしても、この行為そのものが社会的に許されないものであることは明らかだ。
「大騒ぎするのが嫌だったので、お店を出るときにコッソリ店員さんに相談しましたが、ポカーンとした表情で注意する様子はありませんでした。誰か周りの人が注意してくれたら助かったのに……」(同)
◆周りが誰も助けてくれない
セクハラ当事者が問題なのはもちろんだが、周囲の人間が協力的でないという声は他にも聞かれる。
「居酒屋で酔っ払いにアンダーヘアの色を聞かれて困りました。苦笑いしながら無視したんですが、周りの知らないお客さんも一緒になってゲラゲラ笑うばかり。店員も止める様子はなく、非常に不快でしたね」(カナダ人・41歳・男性)
店側としては客同士のトラブルに巻き込まれたくないという面もあるのかもしれないが、放置することはハラスメントを助長することにしかならない。ガイドラインを作るなど、どういった対応を取るべきか明確にしておくべきだろう。
「酒の席で外国人観光客と汚い言葉を教えあったり、セックスについて話すことはどこの国でもあること。ただ、嫌がっていないか、迷惑じゃないか、必ずフォローする人がいます。距離感を間違えたまま、話を続けるのは相手を傷つけるだけです」(同)
外国人や観光客だからと開けっぴろげにするのではなく、むしろ言葉も文化も違うだけに、より注意が必要であることを認識しなければならない。
◆「褒めているつもり」でもNG
また、ハラスメントだと感じている外国人に対して、当事者がよく口にするのが、「こっちは褒めているつもりなのに」というフレーズだ。
「関係性にもよりますが、欧米では基本的に相手の容姿について触れるのはNGです。久しぶりに会った日本人の知り合いに『ずいぶん痩せたね』と言われて、スゴく嫌な気分になりました。やんわり注意すると、『カッコよくなったから、褒めただけなのに』と、あまり理解していない様子でしたが……。そもそも太っているか、痩せているかなんて主観でしかないし、他人に言われる筋合いはありません」(アメリカ人・38歳・男性)
体型だけでなく、髪色や髪型、肌や目の色など、見た目に関する会話は基本的に避けたほうがいい。
「日本ではポジティブな触れ方をすればいいと思っている人が多いので、そもそも触れないでほしいと伝えても、なかなか理解してもらえなくて困ります。『こっちは褒めてるのに、なんで怒られなきゃいけないんだ』という態度を取る人もいる。でも、何か特別な事情があったり、本人がコンプレックスに感じていることだってありうる。相手からその話を振ってくるか、よほど親密じゃないか限りは嫌がる人が多いと理解してほしいです」(フィンランド人・28歳・女性)
かくいう筆者も一度、知り合いが痩せたことを指摘してしまい、「なんでそういうことを言うの?」と注意されたことがある。その際、脳裏に浮かんだのはやはり「褒めたつもりなのに」という言葉。しかし、これをキッカケに今ではそもそも触れること自体がよくないのだと気をつけるようにしている。文化の違いはあれど、相手が嫌がる行為であるのならば、それを無理に続ける必要はないはずだ。
◆より深いルーツに触れてしまう危険性も
「外国にはいろんなルーツの人がいて、見た目と直結しているケースも少なくない。自分は単に表面上の話をしているつもりでも、人種やセクシュアリティなど、相手の中身に深く触れてしまうかもしれません」(アメリカ人・男性・43歳)
どうせ通じないから、外国人相手だからと無礼講のつもりでセクハラ発言をしたり、褒めているつもりでも見た目に触れることには、くれぐれも注意したい。
また、周りでそういった行為を見かけたら、相手が不快に思っていないか確認したり、周囲に注意してあげることも大切だ。
多くの外国人が憧れをもって訪れている日本。不用意な行為で、そのイメージに泥を塗らないよう気をつけたい。