「親が習わせたい習い事」ランキング1位はプログラミング教室

「親が習わせたい習い事」ランキング1位はプログラミング教室(※1)。中学生男子のなりたい職業1位はITエンジニア・プログラマー、2位はゲームクリエイター、3位はYouTuberなどの動画投稿者(※2)。小学生男子のなりたい職業4位がゲームクリエイター(※3)と、ファミリー世帯の“将来設計”はすっかり様変わりした。

そんな世相を反映して、プログラミング教育が熱を帯びている。このムーブメントの牽引役でもあるプログラミングスクールTech Kids School(テックキッズスクール/東京・渋谷)を訪ねてみると、教室はプログラミングを学びたい小学生たちでいっぱいだった。

2年生から6年生まで、年齢に関係なく小グループに分かれてテーブルを囲んでいる。壁際には、わが子が学ぶ様子を見学している母親たちも多い。部屋は総勢60~70名ぐらいの熱気でムンムンだ。スクールを運営するのは、サイバーエージェント系のCA Tech Kids社。同社の上野朝大・代表取締役が盛り上がりの背景を語る。

「2013年、政府が成長戦略のひとつとしてプログラミング教育を提言したのが大きな転換期となったと思います。当時、全国のプログラミング教室・講座は数十件程度だったものが、その後わずか3年で6倍の300件あまりになりました。

私たちのスクールも、体験希望者が毎シーズン1000名を超えるなど、生徒数は3年で10倍になりました。子供にとっては、憧れのゲームクリエイターになれるかもしれない、ゲーム開発が楽しいというモチベーションから。親にとっては、2020年に始まる小学校プログラミング学習必修化に向けて、先取り教育と捉える方が多いようです。

弊社では、スクールで学べない全国のご家庭の希望にこたえて、学習書籍『サイバーエージェント公式 こどもプログラミング』(小学館刊)を出版したり、オンライン教材の提供を始めたりしている状況です」

◆子供は考えるより先に手が動く

上野氏は、「これから社会に必要とされるのは、テクノロジーを武器にできる人材です」と語った上で、こう続ける。

「プログラミング教室が『習わせたい習い事』1位になったことは、我々からすれば、“日本もようやく来たな”というのが正直な感想です」(上野氏)

元々、サイバーエージェントがプログラミング教育の会社を立ち上げたきっかけは、社内の声から始まったものだという。同社社長の藤田晋氏が新規事業を考える経営合宿の場で、「もし小学生向けのプログラミング教室とかあったらどうかな」と聞いたところ、「そんな教室があれば、自分の子供を行かせたい」と役員たちが口々に言ったことが発端だ。

プログラミングは、受験科目にないため、学ぶ機会もなければ、教えてくれる人もまわりにいない。しかし、今後はあらゆる商品やサービスにプログラミングが組み込まれ、どの企業にも社会にも必須不可欠のものになってくる。今でさえ優秀なプログラマーは争奪戦なのに、近い将来、さらに人材不足となり、世界的な競争にも打ち負け、国力の低下につながってしまうかもしれない。同社には多くのエンジニアやプログラマーがいて、それを早くから感じ取っていた。

「プログラミングを受験科目に入れたら、日本にもマーク・ザッカーバーグ氏(フェイスブックの創業者)みたいな子供が出てくるかもしれない」(藤田氏)という壮大な希望を秘めて、2013年にスクールはスタートした。

プログラミングを学ぶと、単にプログラムが書けるようになるだけでなく、「論理的思考が身につく」メリットがあると言われる。実際はどうなのか? 上野氏が語る。

「論理的思考が身につく、国語力が身につく、根気がつく……など、いろいろと指摘されていますが、実際の子供たちは、大人の想像を超えるもっと見えない力を発揮しています。考えるより、手が先に動いているのです。

大人には理由と解説が必要ですが、子供には理由も解説も必要ない。スクールのノウハウを『サイバーエージェント公式 こどもプログラミング』と題して書籍化したのも、これまでのプログラミング関連本は解説がびっしり載っていて、子供のやる気を引き起こせる書籍がない、ということがきっかけです。余計な解説はしていません。

子供がパッと見ただけで自然に感覚的に手を動かせる。これを基本としています。低学年でプログラミング開発を学んだ子が、翌年はアプリをリリースして、高学年になったら大臣賞を受賞している。本当にそんなすごいことが起きているんです」(上野氏)

日本から“ザッカーバーグ”が生まれる──。そんな日がやってくるかもしれない。

※1:「年末年始の習い事アンケート」(イー・ラーニング研究所、2018年発表分)
※2:「中高生が思い描く将来についての意識調査2017」(ソニー生命保険)
※3:「2016年小学生の『将来なりたい職業』ランキング」(日本FP協会)

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