「負け組・非正規」が「勝ち組・正社員」を嘲笑う、なんとも恐ろしい日本の10年後

正規社員と非正規社員のように、雇用形態によって給与が大きく異なることは良く知られていて、その給与差は生涯で1億円を超えるとされています。しかし「正社員はいいなあ」という愚痴は、あと10年ほどで聞かなくなるかもしれません。みていきましょう。 【早見表】大卒・男性「非正社員」と「正社員」の推定年収

正規社員と非正規社員…生涯年収は1億円の差

【図表】年齢階級別・正規社員数と非正規社員数 総務省統計局『労働力調査』2022年平均より作成

総務省統計局『労働力調査』によると、2022年の就業者は6,723万人。5年前の2017年に比べて193万人の増加。その内訳をみてみると、男性は27万人増、女性は165万人増。女性の社会進出が一層進んでいることがわかります。 雇用形態別にみてみると、正規社員・職員が3,597万人と5年前に比べて165万人増。一方で非正規社員・職員は2,101万人で65万人の増加。就職氷河期世代の正社員化の支援など、不本意非正規社員の正社員化支援といった影響もあるのでしょう。 非正規社員・職員の内訳をみていくと、パート・アルバイトが1,474万人で、5年前から60万人の増加。派遣社員が149万人で15万人増、契約社員が283万人で8万人減、嘱託が112万人で8万人減。この5年で主にフリーターが増えたことがわかります。 さらに年齢別に正規社員と非正規社員の人数をみていくと、正規社員は40代後半をピークに減り始めますが、非正規社員は30代後半から増加。50代後半で減少するも、60代で再び増加します。 30代後半から50代前半にかけて非正規社員が増えていくのは、正社員になれなかった氷河期世代の影響もあるのでしょう。また結婚・出産を機に退職した女性が、再び柔軟性のある働き方のできる非正規社員で仕事復帰している、という事情もあると考えられます。また60代でみられる正規社員と非正規社員の逆転は、60歳で定年を迎え、正社員から嘱託社員などと雇用形態を変えて仕事を続ける人が多いことが反映しているものと考えられます。 正規社員と非正規社員といえば、注目されるのは給与格差。たとえば大卒男性を比べてみると、正規社員(平均年齢42.0歳)の平均給与(所定内給与)は月39.4万円、年収は647.8万円。一方、非正規社員(54.7歳)の平均給与は月29.2万円、年収419.4万円。 年齢別の給与に注目すると、20代前半では60万円弱の年収差は、30代前半で175万円、30代後半では265万円と拡大。40代に入ると300万円台、50代後半と定年間近では400万円を超える給与差が生じます。生涯年収では、正規社員2億4,000万円に対し、非正規社員は1億4,000万円。実に1億円近くにもなります(関連記事: 『【年齢別】大卒・男性「非正社員」と「正社員」の推定年収』 )。

2035年、「正社員」がいなくなる⁉

正規社員と非正規社員。これだけの給与差がつくのですから、正社員は勝ち組、(正社員になりたくてもなれなかった)非正規社員は負け組とされても仕方がないかもしれません。 しかし、正社員が勝ち組と高笑いできるのもあとわずか。近い将来、正社員が負け組といわれる時代がくるとされています。 厚生労働省『働き方の未来2035』では、「企業に所属する期間の長短や雇用保障の有無等によって『正社員』や『非正規社員』と区分することは意味を持たなくなる。」とされています。つまり正社員という働き方はなくなるというのです。 というのも、2035年の企業は、ミッションや目的が明確なプロジェクトの集まりとなり、多くの人が、プロジェクト単位で企業に属するようになるといいます。その結果、企業という組織の内と外の垣根は曖昧になり、企業が「正社員」として抱え込むことをやめてしまうといいます。 もちろん、ひとつのプロジェクトが終了しても、次のプロジェクト、またその次のプロジェクトと、ひとつの企業に所属し続ける人も出てくるでしょうが、働き方は想像できないくらい柔軟なものになります。 雇用が流動的になる環境では、必要とされる人材に仕事が集中することが想像されます。そのような時代に対応する人材は、正社員であることに固執する人たちよりも、いまでも柔軟な働き方ができる非正規社員だという見方も。時間的に余裕があるため、仕事を掛け持ちしたり、副業をしたり、スキルアップを目指したり……来たる時代に向けて磨きをかけることができるというのです。 もちろん、これはあくまでも青写真。そのような時代が来るかもしれないし、来ないかもしれません。しかしいまでも柔軟に働けるからと、あえて非正規社員を選択している人も多くいます。なかには正社員とは比べ物にならないくらいの高収入を得ている人も。本当の勝ち組は、いち早く変化に対応しようと、いま、「あえて非正規社員」でいる人たちかもしれません。

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