EUでリコールや警告対象に
「辛ラーメン」で知られる韓国即席ラーメン業界最大手の「農心」から発売されている「海鮮湯麺(ヘムルタンミョン)」と同じく大手の「八道」による「ラッポキ」というラーメンから、EUの基準値を超える発がん性物質が検出された。この商品は、日本でも大手通販サイトや海外製品を取り扱う小売店で販売されており、韓国通の間では名の通った即席麺である。検出されたのは輸出用で韓国内では流通していないとメーカー側は主張しているものの国民は納得しておらず、日本の企業と関係が深いといった点も非難の的になっているという。羽田真代氏によるレポート。
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今回検出された発がん性物質は“2-クロロエタノール(エチレンクロロヒドリン)”。これは工業用原料や医療用器具の燻蒸殺菌などに広く使用されている物質で、“エチレンオキシド(酸化エチレン)”の反応生成物である。今回のラーメンの原材料にもエチレンオキシドが殺菌・消毒用として使用されていたようで、これが基準値を超えたものとみられている。
世界保健機関(WHO)の一機関で、発がん状況の監視・特定、発がん性物質のメカニズムの解明、発がん制御の科学的戦略の確立を目的として活動している「国際がん研究機関(IARC)」では、エチレンオキシドはグループ1(ヒトに対する発がん性が認められる)に分類されている。
農心ラーメンからは1kgあたり7.4ppmと基準値の最大148倍のレベルで発がん物質が検出され、八道ラーメンからの場合は、農心よりも高い10.6ppmのレベルに達していたという。
EUの基準は他に比べて極めて厳しいものだが、それはともかく、EUは当該商品をリコール対象製品とし、ドイツ政府は警告製品として注意を促している。
当該物質は残留農薬から検出される
今回、EUで韓国ラーメンから許容基準値を超える物質が検出されたことで、EU食品・飼料緊急警告システム(RASFF)は「該当日に生産された製品を販売中断し、リコールを実施するよう今月6日にEU各国に通報」した。
しかし、農心側は「基準値以上の数値が検出された該当日以外の製品に関しては内部検査の結果問題ない」と判断し、日付が異なる製品については流通させている。加えて「該当製品については現在エチレンオキシドが流入された経緯を調査している段階だ。ラーメンには農産物が沢山含まれており、その時の原料を全て分析している。原因を把握するには時間が掛かる」と説明している。
韓国メディアのYTNやSBSは農心社員の声として、「問題になった製品は現地の流通チャンネルで既に回収済みである。国内販売製品は生産ラインが異なっており、当該物質も検出されていない。正常に生産・流通されている」「問題は当該製品が国内に流通した可能性についてだ」と提起し、「海外輸出用は釜山工場で、国内用は安養(アンヤン)や安城(アンソン)など、他の工場で生産されているため問題がない」などと紹介している。
この報道通りなら国民はひと安心というところかもしれない。しかし、SBSの報道はYTNより一歩踏み込んだ部分もあり、「当該物質が検出された製品と同時期に生産された国内分の製品については、サンプルが残っていなかったため検査しなかった。6ヶ月の流通期限が経過しており、工場には残っていない」「輸出用と国内用に同一の材料を使用した可能性については把握していない」とも報じている。
環境関連団体のトップを務める崔烈(チェ・ヨル)氏も自身のSNSで「当該物質は残留農薬から検出される。原料は同じなのに、生産ラインが異なるからといって国内製品から検出されないという説明は理解ができない」と言及している。
国内流通してないなんて信じられない
ニュースを見た韓国民からも「国内流通してないなんて信じられる訳がない」「農心だけじゃなくて他のラーメンも調査すべきだ」「親日売国企業の農心(日本企業と関係が深いため)。私は農心を食べてこなかったから関係ない」などといったコメントが寄せられている。ここでも反日が絡むところがこの国らしいと言うべきだろうか。
現状の説明で国民が納得しないのはもっともだ。
それというのも、農心をめぐっては2012年10月にも、「ノグリ」「生生うどん」「エビ風味カップラーメン」などラーメン6種から発がん性物質“ベンゾピレン(多環芳香族炭化水素のひとつ)”が検出されたことがあるからだ。この時、同社は「外部機関に依頼した分析では、ベンゾピレンは検出されていない。また、2012年6月に実施された食薬庁の調査結果から関連製品の生産と出荷を2ヶ月間中断して、調味料納入業者も変えた」と釈明していた。
K-POPや“モッパン(出演者がフードを食べるシーンを紹介する動画。「食べる=モッタ/放送=パンソン」の造語)”などの影響により、韓国食品の輸出は伸びているという。それに伴って韓国企業への注目も高まっているし、そのモラルもまた問われることになるだろう。
羽田真代(はだ・まよ)
同志社大学卒業後、日本企業にて4年間勤務。2014年に単身韓国・ソウルに渡り、日本と韓国の情勢について研究。韓国企業で勤務する傍ら、執筆活動を行っている。
デイリー新潮取材班編集
2021年8月17日 掲載