農作業を手助けする仙台市の「農業サポーター」が、新型コロナウイルス禍の農業現場で貴重な戦力となっている。企業を定年退職したり、子育てを終えたりした市民が、農家の依頼に応じてコメ作りや野菜作りに励み、都市農業の活性化に貢献している。
5月24日、泉区根白石の田園地帯。地元の農業永沢太さん(65)やサポーターの男女3人が集まった。サポーターは新型コロナ対策としてマスクを着け、多収穫米「ゆみあずさ」の苗を載せた板をせっせと田植え機まで運ぶ。永沢さんの家族が田植え機を動かし、約2.5ヘクタールの水田に苗を植えた。
永沢さんは10年以上前から、田植えや収穫に合わせてサポーターの力を借りている。「今季は新型コロナの影響で田植えを始められるかどうか不安があった。サポーターに一生懸命働いていただき、助かっている」と感謝する。
重工業関係の職を63歳でリタイアし、知人の紹介でサポーターになった男性(74)=青葉区=は「汗をかく仕事が好き。今が人生で一番楽しい。少しでも社会貢献したい」と話す。
農業サポーター事業は2002年度に始まった。希望者は養成講座「せんだい農楽校」で5~11月に座学や実習を通じて農業の知識、技術を学ぶ。修了生はサポーターとして登録し、登録農家のニーズをくんで活動する。
当初27人でスタートしたサポーターは今年4月1日現在、128人(男性87人、女性41人)に拡大した。平均年齢は65.1歳。トウモロコシの種まきやタマネギの間引き、ビニールハウスの組み立て、農業法人の事務など幅広い作業に携わり、年間作業日数は延べ3000日を超える。
作業賃金は農家とサポーター間の話し合いで決まり、1時間当たり830円程度となっている。
サポーター約90人でつくる任意組織「みのりの会」の千葉一則会長(72)=泉区=は「現場では厳しさやつらさもあるが、楽しいこともたくさんある。作業後に取れたての野菜を頂いたり、農家の皆さんと交流したりして、日々充実している」と意義を語る。新型コロナを受け、公私で「密」を避けるなど対策の徹底を会員に周知している。
◎担い手・高齢化なお課題
農業サポーターの登録数が伸びるなど農業に関心を持つ仙台市民が増える一方、農家は担い手不足や高齢化といった課題に直面している。「事業を拡大したいが人出が足りない」「長期雇用は難しい」といった声が上がる。
農林業センサスなどによると、市の2015年の農業就業人口は3451人で、05年の6873人から半減した。さらに15年の農業就業人口の高齢化率は59.9%と、05年の52.2%から7.7ポイント上がっている。
東日本大震災の影響も現場に重くのしかかる。沿岸部では農地や農業機材が津波で被災。特に小規模農家にとっては再建に向けた多額の投資が大きな負担となり、経営体の法人化や農地の大規模化が進む。
市農業振興課の担当者は「農作業の助けとなる人材が必要。『みのりの会』の豊かなネットワークも農業サポーター事業の円滑な動きにつながっている」と強調。新型コロナウイルス感染拡大を受けて本年度のせんだい農楽校は中止したが、21年度は実施する方向で検討している。