「近くて高い」が人気?=一人旅も脚光、東京は苦境―GoToトラベル1カ月

政府の観光支援事業「Go To トラベル」が始まって22日で1カ月。開始直前に東京都が除外されるなど混乱もあったが、新型コロナウイルスの感染拡大で冷え切った観光業界にどのような影響を与えたのか。専門家や業者によると、気軽に行けて価格が高い温泉旅館や「1人参加」が条件のツアー商品が好評な一方、都内の宿泊施設は苦境が続いている。

 高崎経済大の井門隆夫教授(観光学)は「『Go To』が動機付けとなった旅行は増えていない」と指摘しつつ、「都市部から近い地域や、最大限の補助を受けるため1泊2万円以上の温泉旅館などが好まれている」と話す。

 有馬温泉(神戸市北区)にある旅館「欽山」では、コロナ対策として宿泊客1組に対し2部屋を用意。客がくつろぐ間に別部屋で食事を用意するプランを導入した。価格は4万円前後からで、社長の小山嘉昭さん(52)は「食事を運ぶ従業員らとの接触が避けられる」と狙いを説明する。

 提供できる部屋数は減ったものの、以前は稼働率が低かった平日の宿泊予約が増加し、売り上げは前年比8割まで回復。小山社長は「『Go To』が回復の背中を押してくれた。神戸から近く、感染症対策をしていて安心して宿泊できる点が評価されている」と話した。

 旅行会社クラブツーリズム(東京都新宿区)では、7月から「Go To」対象の一人旅専用ツアーを販売。団体ツアーだが、1人での参加が条件だ。最も人気なのが観光列車を貸し切って食事を楽しむ2泊3日の商品。1週間で完売し、同社は追加日程を組んで対応した。担当者は「コロナ禍以降、1人参加の割合は相対的に増えている」と指摘。「収束の見通しが立たない中、友達を誘うのに抵抗があるのでは」と分析した。

 一方、東京の観光名所、浅草・雷門そばの「雷門旅館」では、「Go To」開始後も売り上げが感染拡大前から8割減の状況が続く。浅草寺や東京スカイツリーを一望できる同旅館は、例年だと7月の隅田川花火大会やお盆の期間中はほぼ満室になるが、花火大会は中止となり、東京都は同事業の対象外になった。取締役の戸部政俊さん(30)は「『Go To』に期待していたのに、このままでは経営の立て直しに時間がかかってしまう」と強調。「対象外で恩恵を受けられなかった旅館などに補償してほしい」と訴えた。

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