徘徊する野犬が多いとして、茨城県神栖市は7月、野犬等対策会議を設置する。徘徊犬の収容は県動物指導センターの業務だが、同市は「放し飼いをきちんと取り締まって」という市民の声を受けて独自に実施する。「野犬がうろつく町」として、テレビ番組で取り上げられたこともあり、市は汚名返上に乗り出したが、解決には市民の協力も不可欠だ。(城野崇)
▼マナー大丈夫?
神栖市が発行する「広報かみす」(5月15日号)。「忘れていませんか?飼い主のマナー」と題し、犬の放し飼いは県条例で禁止されていることや動物を捨てると法律で罰せられることを説明、「飼い主は最後まで責任を!」と訴えた。
今さらながらに基本的なマナーを訴えているのは、実際に犬の放し飼いが多いからだ。
同市は鹿島港を中心に重工業が発展し人口も増加しているが、かつては農業と漁業の町だった。市関係者は「鹿島港が整備される以前は民家が離れており、犬をつないで飼う習慣が薄い地域もあった」と話す。
市環境課は、放し飼いの犬が野犬化、さらに、市外からの捨て犬が加わり現在のような状況になった可能性を指摘している。
▼年間420頭捕獲
県動物指導センターによると、昨年、県内で捕獲された徘徊犬は4958頭。同市は421頭と最多だ。徘徊犬は人に危害を加えるおそれもあるが、県内で年間約350件のかみつき事故のうち、「神栖が特に多いとわけではない」という。
そんな中、市民がショックを受けたのは、3月放送のTBS「噂の東京マガジン」。「恐怖!!今どき野犬と飼い犬がうろつく町」とショッキングなタイトルで、住宅地などを犬が歩き回る映像を放映。かみつかれたり、追いかけられたりした住民の体験談も紹介した。
市民からは「あのような放送をされてショックだ」という声が市役所に寄せられ、対策を望む声もこれまで以上に多くなった。
▼捕獲したら苦情も
市では同センターと連携して対策を取っているが、「野犬と飼い犬の区別がつかず、捕獲してから飼い主から苦情が来ることもある」(同課)。
同課は4月、市内各地の行政委員に状況調査を依頼。8地区で特に徘徊犬が多い状況を把握した。
7月に設置する対策会議のメンバーは行政委員をはじめとする市民や動物愛護団体、獣医師、鹿島署員、同センター職員など。市民や専門家を巻き込み、対策を講じる構えだ。
ただ、同課や同センターの担当者は「徘徊犬を減らすためには市民の協力が重要」と口をそろえる。
日本動物愛護協会も「飼い主のモラルを向上させる以上の抜本的な対策はない」と指摘。「犬を捨てるのは動物に無関心な人。そういう人に動物の遺棄が犯罪であることを啓発することが重要だ」としている。