「長生きする睡眠」ここが違う 寝だめNG、理想は7時間

“寝不足が体に悪い”とは誰もが思っているだろう。しかし、最新の研究では、単に睡眠時間の長短ではなく、起床時刻や寝るときの姿勢、寝具の使い方などが重大疾患のリスクに関係することが分かり始めている。2人の「快眠博士」が提唱する、長生きにつながる眠り方とは──。

◆寝だめはNG。昼寝するなら「コーヒーを飲んでから」

 日に日に暖かくなり春めいてきた。たまには朝寝坊を──この「春眠暁を覚えず」が重大疾患のリスクを上げるという研究結果が2月に発表された。

 米コロラド大学の研究で、男女36人を「毎晩9時間睡眠」「毎晩5時間睡眠」「平日5日間は5時間睡眠だが、週末2日間は好きなだけ寝る」の3グループに分け、血液検査を行なった。

 その結果、「週末は好きなだけ寝るグループ」は、糖尿病リスクを示すインシュリン抵抗性の値が他の2グループに比べて有意に高かった。同大学の研究グループは「体内時計が狂い、間食が増えるなど生活習慣が乱れてしまっている」と推測している。雨晴クリニック副院長で睡眠専門医の坪田聡医師がこう話す。

「寝不足を感じているのであれば、休日の“寝だめ”ではなく、毎日20~30分ほどの昼寝をおすすめします。正午~午後3時までであれば、夜の睡眠にも影響しません。昼寝が長くなりすぎないように、昼食後にコーヒーやお茶を飲んでから横になるとよいでしょう。“眠れなくなってしまうのでは”と思われがちですが、カフェインの効き目は飲んでから30分~1時間後に表われるので“飲んでから昼寝”が正解です」

◆「横向き寝」は長生き「仰向け寝」は早死に

 いびきを伴い、眠っている間に10秒以上呼吸が繰り返し止まる「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」。呼吸が止まることで血液中の酸素濃度が下がり、心臓や血管に負担がかかるため重大疾患に繋がるといわれてきた。日本循環器学会が2010年に世界各国の研究結果をとりまとめたところ、SASだと高血圧や慢性心不全になるリスクが約2倍。糖尿病や心筋梗塞・狭心症のリスクは2~3倍に、脳卒中リスクは約4倍になるとしている。

「SASのほとんどが、睡眠時に気道が塞がってしまうことが原因です。解消するには、寝る際の姿勢を改善することが有効です」

 そう話すのは、東京疲労・睡眠クリニック院長で大阪市立大学大学院特任教授の梶本修身医師だ。

「気道が狭くなる要因として『肥満』や『扁桃腺肥大』が挙げられますが、最も大きいのが『仰向け寝』です。横向きで寝ることで気道が広がり、8割が症状を改善できるといわれています。抱き枕などを使って横向き寝を習慣付けるとよいでしょう」

◆理想の睡眠時間は「7時間」

 最も長生きできる睡眠時間は何時間なのか──各国の研究機関が調査を行なってきた。その中でも最大規模のものが、2002年にアメリカがん協会が男女110万人を対象にした調査だ。その結果、最も死亡率が低かったのが「6時間30分以上7時間30分未満」のグループだった。

 この調査以降でも、「8時間以上寝ると認知症リスクが増加する」(英ウォーリック大学、2014年)、「睡眠が6時間以下だと前立腺がんリスクが増加する」(東北大学、2008年)といったように、「睡眠時間は7時間より長くても短くても健康を損なう」という結果がある。

 睡眠時間が7時間より短い人は、「寝坊するのではなく、早寝や昼寝で補い、起床時間を一定に保ってください」と坪田医師は注意を促す。

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