「陰陽の法則」で体をつくる 

 人間の体に本来備わっている「陰陽」に注目した食べ方が注目されている。陰は体を冷やし、陽は体を温める。両者は表裏一体のシーソーのような関係にあり、低血圧や低体温の人は「陰性の食べ物を控え、陽性の食品で体のバランスを整えよう」と専門家はアドバイスする。日本の伝統的な食事は陰陽という点でも理想的だという。(日出間和貴)
 ◆昔ながらの一汁一菜
 自然界にある「陰陽五行説」に沿った暮らしを提唱する料理研究家、若杉友子さん(74)。京都府綾部市の山深い集落で、自給自足さながらの「陰陽ライフ」を実践する。
 「生きること全てが陰陽のリズムで成り立ち、食べ物の一つ一つにも陰と陽がある。ナスやピーマン、トマトなどの野菜は陰性で、大根やニンジン、カボチャは陽性の野菜に属する。食卓に陰性のものが多いときは陽性のものを一緒に食べる。火にかけて調理の手間を加えるだけで陰性の野菜は陽性に変わります」
 若杉さんは近著『体温を上げる料理教室』(致知出版社、1470円)の中で、食べ物によって体調を整えたり病気を治したりする「食養」の考え方を紹介。陰と陽の中庸の食事が健康につながると訴える。1日30品目を取ることに努めるよりも、一汁一菜の昔ながらの食事は陰陽のバランスが自然に取れているといい、中でもみそ汁は体内を掃除してくれる“特効薬”だという。
 NPO法人「メダカのがっこう」(東京都武蔵野市)は都内に「陰陽の法則」にのっとった食堂「おむすび茶屋」を出店している。「夏場は体を冷やす陰のものを、冬場は体を温める陽のものを中心とした旬の料理を提供しています。店内には食品の陰陽表もあり、食べながら陰陽について学べます」と中村陽子理事長。健康志向のサラリーマンの姿も多いという。
 ◆知識を覚え実践
 「冷えとり」の第一人者として知られる医師、進藤義晴さん(88)は著書『これが本当の「冷えとり」の手引書』(PHP研究所、1千円)の中で、冷やす性質の食品を食べるときは「冷やす性質を緩和する醤油やみそをつけて食べるといい」とアドバイスする。伝統的な発酵食品のパワーは侮れない。
 若杉さんによると、食べることで招いた病気は食べることで治していくことが最も理にかなっているという。陰陽の基礎知識を覚えたら、(1)生命力がみなぎる季節のものを食べる(2)地元で育った食材を食べる(3)野菜はできるだけ火を通して食べること-を実践することで病気にならない体の基本ができていくという。
【用語解説】陰陽五行説
 古代中国で成立した自然哲学の概念で、「陰陽説」と「五行説」からなる。陰陽説は自然界に存在する物質が陰と陽から成り立ち、両者は敵対するのではなく、循環を繰り返すと考えられた。五行説は自然界に存在する物質が、木・火・土・金・水の5つの元素に由来すると唱えられた。

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