「電通に入っていたら大成功していた」糸井重里も絶賛、コピーライター長州力

そろそろ、ロンドンオリンピックも間近。そういえばアスリートには、なぜか名言が多い気がする。「今まで生きてきた中で、一番幸せです」とか「キモチいいーっ! 超キモチいい」とか、どれもエッジの効いた独特のボキャブラリー。高い運動能力を誇る彼ら・彼女らは、言語能力にも長けていた。
そして、もう一人。皆さんに、知っていただきたい名言の主がいるんです。
“革命戦士”長州力。糸井重里に「電通に入っていたら大成功していた」と言わしめた彼のコピーセンスは、1980年代以降のプロレス界を揺すぶり続けてきた。
そんな長州の名言歴を振り返らせてくれるのは、ベースボールマガジン社から発売されている『長州力 真実の言葉』だろうか。
このムックでは、長州の今までの名言をピックアップした「長州力の言霊」なるページや、大仁田厚、武藤敬司、前田日明という長州と因縁深い3選手との対談を収録するDVDなどを満喫することができます。
まずは、「長州力の言霊」を見てみたい。早速目に入るのは、やはりコレだろう。藤波辰爾(当時・辰巳)に向けられた「オレはお前の噛ませ犬じゃない!」という一言。長州力ブレイクのきっかけとなった名ゼリフである。
この言葉が、なぜ衝撃的だったかというと、ある意味タブーに触れてしまっているから。プロレスとは、「噛ませ犬」がいないと成立しないジャンル。誰しもが、与えられた役割をこなす義務がある。長州の発言は、その掟を根底から覆すものであった。
しかし“噛ませ犬発言”を機に、長州はファンからの圧倒的支持を獲得! ジェラシーによるフライングで、プロレスの価値観を一変させてしまった。
そこからはもう、名言出まくり、神降りまくり! 「オレたちはロックで、あいつらはワルツ」(スタイルの違う全日本プロレス勢を指し)、「オレと藤波は、同じコインの表と裏」(ライバル・藤波辰巳を評して)、「プロレス界に非常ベルが鳴っている」(業界を憂い発せられた発言)など、長州がコピーライターだったらいくら稼ぎ出していたかと思うほどの冴えっぷりを見せ付けている。事実、プロレス界で長州の名ゼリフは数十年と語り継がれてきているし。
では、昨今の長州はどうなのだろう? 実は、全く衰えていないのだ。その辺り、付属のDVDで確認していこう。
特に注目は、前田日明との対談だろうか。前述の“噛ませ犬発言”を始め、数々のフライングを重ねてきた長州。一方、いくつものトラブルを肥やしにカリスマへと登り詰めていった前田。2人の邂逅は、極めてスリリング。要するに、トラブルメーカー同士の会話なのだから。
……と心配している我々をヨソに、長州が絶妙のまとめを披露してみせた。
「無事故、無違反で名を残した人間はいない。オマエ(前田)の免許なんか、免停でストップなんだから」
名言、キターッ!含蓄、ありまくり!! 感銘を受けたのだろうか、かの有吉弘行はツイッター上で「『無事故、無違反で上に上がった奴なんていないよ』をメモ。どっかで言おう。。。」と表明している。長州力の感性は、2012年の今も有効だった。
もう一つ、武藤敬司との対談も興味深い。ここで長州は、「闘魂三銃士(武藤、蝶野、橋本)の中で誰と試合しにくいか?」について言及している。
もう、悪びれもしない。長州は、ハッキリと「武藤」と断言してしまうのだから。実は武藤への苦手意識はかねてより公言されており、長州は武藤を以下のように評していた。
「武藤と試合してたら、コーヒー1杯飲めるよ」
テンポが合わな過ぎて、試合中コーヒーを飲めるくらいの間があると表現したかったのだ。長州は、口から先に生まれたのか? 私は、彼の爪の垢を煎じて飲みたい。「プロレス」という激しいシチュエーションに「コーヒー」なんてほっこりワードを挟み込む手法。プロレス界の革命戦士は、比喩表現においても革命を起こす。
最後に。「KAMINOGE vol.7」(東邦出版)におけるインタビューでまたしても長州の尋常ならざるボキャブラリーセンスを目撃してしまったので、そちらもチラッとご紹介を……。
まず、自身の携帯で撮った金環日食の写真をインタビュアーに見せ
「コイツら、すごいよなぁ」
なんと、月と太陽を「コイツら」呼ばわり……。そのくせ、「ベランダから撮ったんだよ。これ、美しくね?」と、子供のように無邪気に感嘆するのだ。
おわかりだろうか? 長州は、「こんな事を言ってやろう」と事前に用意するタイプではない。思い付いた言葉を、そのまま口にしているだけ。これって、凄いと思いません!? まさに、生粋の“名言メーカー”である。
長州語録は、「知性」ではなく「感性」によって成り立っている。長州には、神が降りている。
ちなみに長州の大学の後輩には、元・国語教師の馳浩(衆議院議員)がいる。……が、個人的に馳に名言は無いと思う。やはり、語録は「知性」よりも「感性」。そう、私は確信する。
(寺西ジャジューカ)

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