「震災学」第17号刊行 東北学院大 発行継続の意義 検証

東日本大震災をさまざまな角度から検証する東北学院大の雑誌「震災学」第17号が刊行された。2012年に創刊。10年以上にわたり、被災地の大学が雑誌を発行し続ける意義を掘り下げ、教訓の継承や他地域との連携強化といった課題を浮き彫りにした。

教訓継承など可能性探る

 巻頭は「<震災学>から<被災学>へ」と題した座談会。東北学院大の大西晴樹学長と地域連携センター長の坂本泰伸教授、「想像ラジオ」「東北モノローグ」など震災がテーマの著作を持つ作家・クリエーターのいとうせいこうさんの3人が、雑誌の歩みを振り返り、今後を展望した。

 大西学長は「さまざまな書き手が多様な手法で震災の大きさ、悲しさ、苦しさをすべて吐き出し-」と、幅広い層に声が届く雑誌の特質に言及。坂本教授は、震災後に感情の整理が付かず、16年春発行の第8号に初めて寄稿した自分自身にも触れ、「被災地に暮らすわれわれの気持ちの変化にきちんと寄り添ってきた雑誌だ」と話した。

 いとうさんは、震災を機に生まれた雑誌の方向性について「被災に重点を置いたらより普遍的なテーマを包含できる」と指摘。戦争や災害で苦しんでいる地域との連携により「東北で得た知見を相手にぶつけたり、相手の知識をわれわれが咀嚼(そしゃく)して紹介したりできる」との可能性を示唆した。

 「震災と文学」をテーマに、東北ゆかりの作家3人のインタビューも収録した。仙台市出身の芥川賞作家、佐藤厚志さんと石沢麻依さん、盛岡市在住の木村紅美さんが登場。さまざまな災厄と背中合わせの日常を長い射程で捉えていく、それぞれの思いを聞いた。

 A5判、260ページ。2200円。連絡先は東北学院大地域連携課022(264)6562。
(菊地弘志)

タイトルとURLをコピーしました