「面倒な人とは縁を切っていい」…年賀状を出すのは大切な人にだけ「せいぜい5枚で十分」なワケ

人づきあいもズボラでいい

現役時代には、相性が悪い人とも付き合わざるを得なかった。先輩・後輩、上司・部下といった人間関係が実は苦手で、そんな悩みも退職すれば解消されるはずだった。

ところが―ー。

「勤務先のOB会のメンバーは年配者が多く、食事会やゴルフコンペなど、定年後も面倒な幹事やクルマの運転を押し付けられるケースは多いものです。ただでさえ、元上司や元先輩と顔を合わせたくない人にしてみれば、楽しいわけがありません」(精神科医の保坂隆氏・70歳)

退職後まで、社会人時代の延長のように先輩面するような面倒くさい人とは縁を切り、「人づきあいもズボラにしたほうがいい」と保坂氏はアドバイスを送る。なぜなら多くの人にとって、ストレスの最大の原因となるのは人間関係だからだ。

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全生庵(東京・台東区)住職の平井正修氏が話す。

「たしかに『縁』は人生を支える重要な柱であり、私たちはそれを無視して生きることはできません。ところが人は、この縁を大事にしているつもりで『人間関係』という厄介なものに振り回されてしまうことが多いのです」

無理して付き合っても、ストレスは溜まるばかり。煩わしい近所づきあいや、地域の会合や旅行も気が進まないなら、あえて参加する必要はない。

「もちろん、『行きたくありません』とズバリ言ってしまうと角が立ちますし、無用なトラブルを招く可能性があります。かといって『ダラダラ過ごしたいから』では、断る理由としていまひとつ弱い。

『その日は用事があって』『息子夫婦が遊びに来るので』などとまったくのウソをつくのも、気が引けるもの。今の時期なら、『身体がちょっとだるくて、万が一、コロナだったらみなさんに迷惑をかけてしまうので……』と伝えてみてはどうでしょう」(前出・保坂氏)

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義理で出す年賀状はもうやめよう

公私を問わず面倒くさい人と縁を切る方法として、「年賀状は出さない」ことをすすめるのは、漫画家の弘兼憲史氏だ。「定年を迎えたり70歳を過ぎたりしたら、面倒くさい人とは別に付き合う必要がない」としてこう語る。

「古い友人でも、腹立たしいことが重なったら付き合わなくていいんです。無理に『今日からお前とは話さない』なんて言わずとも、疎遠になれば自然と縁は切れますから。要するに、『フェイドアウト』ですよ。年賀状を出さなかったら、相手もわかるじゃないですか」

この「年賀状を出さない」手法は、面倒くさい人との関係を切るために限らず、「人づきあい自体を見直したい」という人にとっても有効だ。作家の林望氏の場合、年賀状の枚数は全盛期の4分の1にまで減ったという。

「私は10年前から出すのをやめ、いただいた方にのみ返すようにしたところ、徐々に少なくなりました。こちらが義理で出していると向こうも送らないといけないから、実はお互いにとって迷惑だったのです」

そもそも年賀状を出すこと自体、大変な労力を要する。パソコンの宛名ソフトで住所や氏名を管理・更新し、それを自宅のプリンタで出力する場合、1日がかりはザラ。中には何日もかけて手書きで一枚一枚、仕上げる人もいる。

そんな年賀状をやめて「本当にラクになった」と明かすのは、宗教学者の島薗進氏だ。かつて700枚出していたが、20枚にまで激減している。

「やめようと思ったきっかけは、『もう疲れた』から。まあ、そろそろやめてもいいんじゃないかと。そのあたりは『ダラダラ』していますね。10年ほど前からは年賀状が来ても、返事を出しません。その代わり、ツイッターやメールで『年賀状はやめました。すみません』というお知らせを書きました。

もう70歳を過ぎたので、できるだけ無理はしません。死の世界に自分が近づいているので、やりたくないことは無理してやる必要もないだろうと」

その気になれば電話やメール、SNSで気軽につながることのできるこの時代。かつての上司や同僚、友人、親戚のうち、心の底から年賀状を交わし、近況を伝えたい(知りたい)と願う人が何人いるだろうか。そして、惰性で続けることの意味について、立ち止まって考えてみてはどうだろう。

前出の林氏は、「もともと私には大切な友人が2~3人しかいない」と語っている。

年賀状のやり取りは本当に大切な人やこれまでお世話になった人だけにとどめ、義理の付き合いを断てば、せいぜい5枚で済むはずだ。

後編記事『「いい人疲れ」をしてしまう人たち…70歳過ぎたら「頑張らない、無理をしない、なすがままでいい」』に続く。もっと好きなように生きていいのだ。

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