東北の百貨店で高額商品の売り上げが持ち直している。絵画、貴金属を含む宝飾類は今年1~3月、前年同月を上回った。4月は一服した格好だが、景気低迷で富裕層に漂っていた買い控えムードが薄れてきたとみられる。業界内では「価格に見合う価値があれば高くても売れる」と消費行動のめりはりを指摘する声も出ている。
東北百貨店協会によると、宝飾類の前年同月比の売上高推移はグラフの通り。主力の衣料品と比べると、回復基調がはっきりうかがえる。
東北全体では伸び悩んだ4月も青森、秋田、岩手の北東北3県は24.1%の大幅増だった。2カ月続きで前年水準をクリアしたさくら野東北(青森市)は「絵画の企画展が当たった。得意客への営業努力も実を結んだ」と強調する。
青森、岩手両県で店舗を展開する中三(青森市)も4月の宝飾類の売上高は前年比10.5%増。前年超えは11カ月ぶりで「アクセサリーのほか呉服にも動きが出ている」と喜ぶ。
超高額商品の販売が業界で話題になったのは、ある百貨店が開いた宝飾品販売会。1点で約2000万円の商品を、その場で現金払いした客がいたという。
各百貨店によると、購入者は医師や会社経営者ら富裕層が中心。仙台三越(仙台市)は「『不景気のご時世に高い買い物は控えた方がいい』という心理的ブレーキが緩んできたのではないか」とみる。
こうした変化に、顧客を直接訪問する外商部門も敏感に反応。新作や限定品など付加価値の高い商品を懸命に売り込む。
藤崎(仙台市)は今年に入り、宝飾類の売上高が2割増ペースという。外商担当者は「百数十万~数百万円の価格帯が一番動く。中途半端に安いより、むしろ高い方が売れる」と手応えを感じている。
ただ、東北の業界全体の売り上げは前年を下回る状況が続き、景気回復を実感できていない様子だ。「宝飾は『一発屋』の要素が大きい。バッグや衣料にまで波及しないと」と川徳(盛岡市)。うすい百貨店(郡山市)も「催事以外の普段の売れ行きはまだ厳しい」と冷静に受け止めている