人気漫画『鬼滅の刃』に登場する鬼殺の剣士たちの奥義と言えば、瞬間的に身体能力を上昇させる特殊な呼吸法”全集中の呼吸”だ。順天堂大学医学部教授で自律神経に関する多数の著書を持つ小林弘幸医師は5月19日、アスコム社のリリースで、現実でもこの呼吸法に免疫力を高める効果があることを解説した。
全集中の呼吸の方法はどうすれば習得できるのだろうか。作中では、育手の鱗滝左近次が「身体の隅々の細胞まで酸素が行き渡るよう長い呼吸を意識しろ。体の自然治癒力を高め、精神の安定化と活性化をもたらす。上半身はゆったりと、下半身がどっしりと構えて……」と主人公の竈門炭治郎に教え込んでいた。
「呼吸法ほど即効性の高い健康法はありません」
さらに、炭治郎の姉弟子にあたる真菰は、呼吸法の効果をこう説明している。
「体中の血の巡りと心臓の鼓動を速くするの。そしたら、すごく体温が上がって、人間のまま鬼のように強くなれるの。とにかく肺を大きくすること。血の中にたくさん、たくさん空気を取り込んで、血がびっくりした時、骨と筋肉が慌てて熱くなって強くなる」
小林医師はこの呼吸法の効果について、医学的な見解を述べている。
「呼吸によって肺に取り込まれる酸素は、血液に溶け込み、毛細血管を経由して全身の細胞に届けられていきます。ゆっくりと深く呼吸をすれば、肺に取り込まれる酸素量が増え、酸素を運ぶ全身の血流量もアップします。その結果、全身の細胞の活性化につながるでしょう」
つまり、現実においても呼吸の仕方を工夫することで、身体が持つ力を引き出すことができる、ということのようだ。小林医師は「私の研究では、ゆっくりと深く呼吸をすることで、すぐに毛細血管の血流量がアップすることを確認しています。つまり呼吸には、一瞬で体の状態を変える力があるのです。呼吸法ほど即効性の高い健康法はありません」と説明している。
目指すところは、やはり”常中”
では、実際に”全集中の呼吸”を行うには、どうすればいいのだろうか。作中で「どうやったらできるかな?」と聞く炭治郎に対して、真菰は「死ぬほど鍛える。結局、それ以外にできることないと思うよ」ときっぱり答えていたが、少しハードルが高そうだ。
そこで、小林医師が勧めるのは「長生き呼吸法」。同呼吸法では、吐く時間を長くすることで、副交感神経が刺激され、自律神経を整えることができるという。また、腸のマッサージにもつながり、腸内環境を整える効果があるとする。小林医師は
「ゆっくりと深く呼吸をすれば、全身の血流量もアップしますから、免疫力の向上も期待できるでしょう」
と説明している。
また、蝶屋敷での機能回復訓練に打ち込む炭治郎が努力を重ねて会得したのが、全集中の呼吸を四六時中続ける”全集中・常中”だ。小林医師も、前述の「長生き呼吸法」を24時間続けることをオススメしている。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛で、生活リズムの乱れがちな日々が続いている。現実に倒す鬼はいないかもしれないが、心身の不調があれば、呼吸法を通して”刃”を向けてみたい。