今年は例年以上に暑さが厳しいからか、鰻(うなぎ)専門店の多くは土用の丑の日以降も盛況だという。
「いきなり!ステーキ」株主優待再開で復活の兆し 出遅れた海外展開が伸びしろになる可能性
過剰漁獲と成育環境の悪化などで、鰻の稚魚であるシラスウナギの著しい減少により鰻が高級化してから久しい。そんな中、破竹の勢いで店舗数を増やしているのが「鰻の成瀬」で、本格的な鰻が手軽に食べられると評判になっている。
■本格うな重1600円~で話題に
「メニューはうな重のほかにかば焼きがあって、鰻のランクが並、上、特上の3タイプに分かれています。うな重は並の2分の1匹の税込み1600円が最安値で、最高値は特上1匹の同4400円です。専門店並みの鰻が比較的安価に食べられるのが特徴です」(フードライター)
鰻の成瀬は2022年9月、横浜に1号店をオープン。以降、現在まで40都道府県と香港に計240店舗以上を展開している。佐賀県初出店の佐賀北川副店は、同県出身のタレントの優木まおみがオーナーを務めていることが話題に。
“串打ち3年、焼き一生”といわれる業界において、ボタンひとつで職人が焼いたような鰻が5分ほどで仕上がる機械のほか、飲食店に不向きといわれる立地への出店で、安さが実現しているという。
「都心の店によく行きますが、カウンター10席ほどの店を若い店員さんだけで回しています」(前出のフードライター)
だが、この急成長ぶり、どこか既視感があるのではないだろうか。かつて怒涛の勢いで出店を重ね、今や最盛期の半分程度まで店舗数が縮小しているステーキチェーン「いきなり!ステーキ」や、高級食パンの「乃が美」を彷彿とさせるのだ。
「こうしたチェーンは晴れの日使いする高級店とはバッティングしづらいですが、今や鰻は牛丼チェーンやファミレスでも手軽に楽しめますし、スーパーでも国産の鰻が比較的安価で出回っています。しかも、食べる頻度がどちらかというとステーキよりも少ない上に、1食1600円だとしてもたびたびランチ使いするわけにはいかない金額でしょう」(消費経済アナリスト・渡辺広明氏)
ほかにない省人化されたオペレーションや、特別な仕入れルートの有無が決め手というが……。
「仕入れる鰻の味や品質の差別化が中長期的な成長のポイントとなるでしょう。鰻のファストフード化で日本人が食べる頻度が上がれば、業界の景色がこれまでとは変わってくるのではないでしょうか」(渡辺広明氏)
急拡大で、ほかのチェーンと同じ轍を踏まずに済むか。