「0円ビジネス」夜明け前 無料配布、収益効果期待外れも

 味の素や日本マクドナルドなど食品・外食各社が相次いで「無料(フリー)」ビジネスに乗り出している。個人消費が停滞する中、“究極の値下げ”で自社製品の得意客になってもらうのが狙いだ。無料提供の試みはインターネットが先行しているが、実際の店舗で無料配布する試みは定着するのか。
 ◆マック「効果あり」
 「おみそ汁やお吸い物は無料でおかわり自由、塩おむすびは1個無料」。そんな無料店「だしカフェ」が1日、東京・有楽町にオープンした。味の素が日本の食文化である「カツオ節やコンブなどから取っただしの魅力を再発見してほしい」(三輪清志専務)という狙いで始めた。その上で、「ほんだし」など同社のうまみ調味料の消費拡大を期待している。
 日本マクドナルドは昨年7月から、全国の店頭で定期的にコーヒー(通常120円)を無料提供するキャンペーンを展開。次回は今月15~21日に実施する予定だ。同社が重点を置いているのが「いかに来店客数を増やすか」(原田泳幸会長兼社長)。他のコーヒーチェーンより安い自社製品の味を知ってもらった上で「ハンバーガーなど他のメニューも買ってもらう」狙い。実際、同社の業績は過去最高益を更新中で、無料提供も効果ありと判断しているようだ。
 ◆おかき 一転有料化
 ただ、無料サービスが売り上げ拡大につながるかどうかは未知数だ。ダスキンが展開する「ミスタードーナツ」は創業40周年を記念し、9月28~30日に全1330店でドーナツ(通常105円)を各店先着300人に無料提供する「大試食会」を行い、3日間で約120万個をサービスした。同社は「お客さまへの利益還元が目的」とし、11月1~3日にも第2弾を行う予定だが、9月の無料配布の売り上げ効果は「プラスでもマイナスでもない」という。
 無料提供を取りやめたケースもある。米菓製造の播磨屋本店(兵庫県豊岡市)は08年からおかきやドリンク類を提供するカフェ「播磨屋ステーション」を東京・銀座など全国7カ所で展開したが、おかきは8月下旬以降、1皿200円の有料化に踏み切った。理由は「マナーの悪いお客さまが増えた」(同社)ためという。無料カフェによる売り上げ効果も「特に増えてはいない」と期待外れの面も。
 インターネットに多い無料のビジネスモデルは、多くの利用客に使ってもらい、その中から有料でも利用する客をつかみ取る形だ。個人用文書管理システムで日本で約15万人の利用者を持つ米エバーノートのフィル・リービン最高経営責任者は「無料のお客のうち、5%程度が有料会員になればビジネスが成り立つような仕組み」と語る。
 食品・外食各社の無料ビジネスは始まったばかりで、収益効果に結びつけるにはまだ試行錯誤が続きそうだ。(西川博明)

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