「2強」道の駅の戦略注目 山形・遊佐と秋田・にかほ 日沿道全線開通まであと4年

秋田、山形県境の日本海沿岸東北自動車道(日沿道)の全線開通を4年後に控え、県境を隔てた二つの道の駅が異なる対応で臨む。秋田県にかほ市の「象潟ねむの丘」は、隣接地に新たなアウトドア施設を来秋開設。山形県遊佐町の「鳥海ふらっと」は、整備される最寄りインターチェンジ(IC)そばに全面移転する。開設からともに四半世紀となり、東北屈指の集客を誇る日本海側2強の戦略に注目が集まる。(酒田支局・梅木勝)

素通り防いで観光拠点へ

 両施設と県境区間の日沿道整備状況は地図の通り。

 延伸をにらみ、早くから構想を練ってきたのが遊佐町だ。夏場の岩ガキなど魚介類や農産物直売所が人気を呼んでいるが、手狭だったことから移転を好機と捉える。将来の町づくりの柱に据えた青写真を描き、今月1日、町民向け説明会を開いた。

 2026年度の全通に合わせ、遊佐鳥海IC近くの民有地3ヘクタールを取得。観光拠点として、にぎわいと雇用を創出する「パーキングエリアタウン(PAT)」を整備する。国道7号沿いの現在地からわずか2キロしか離れていない。

 時田博機町長は「日沿道が開通すれば今の施設は素通りされてしまう。単なる移転でなく、鳥海山や庄内の食を発信し、PATとして新たなにぎわいをつくる」と意気込む。

景勝地生かし「目的地」に

 一方の象潟。松尾芭蕉も訪れた景勝地・九十九(くじゅうく)島が眼前にあり、温泉も備え、海に沈む夕日を望める立地が売りだ。東北最大級の敷地6・5ヘクタールに加え、来秋には隣接する遊休地(0・5ヘクタール)に登山用品大手モンベル(大阪市)が入るビジターセンターを開設する。同社と3年前に包括連携協定を結び鳥海山登山、キャンプ、カヤックなど、アウトドア誘客の拠点と位置付ける。

 移転せず、現施設の魅力向上を図る戦略について、にかほ市観光課は「この景勝地に立つ魅力は唯一無二。ICに移ることは中心部から外れることになり、町全体への波及効果を考えても現在地が最適」と説明。道の駅としては豪華な6階建ての建設に巨額投資した事情もある。

 現在は国道7号経由で「秋田の玄関口」としてにぎわうが、3年後には小砂川(こさがわ)ICが玄関口となり、状況は一変。翌年全通すると象潟には高速を降りなければ寄れなくなる。

 昭和から平成にかけ、ドライブインの栄枯盛衰は道路新設に伴う車の流れが決定付けてきた。市川雄次にかほ市長は「トラックをはじめ何割かの減少は覚悟している。わざわざ来てもらえる『目的地』として、観光やソフト面で磨きを掛けていくしかない」と力を込める。

 同じ日沿道の山形・新潟県境では、鶴岡市温海の「しゃりん」が鼠ケ関IC隣接地に27年4月移転開業予定で整備を進めている。

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