東北6県では新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休業要請の対象に理美容室は含まれず、自主的に休業したり、やむを得ず営業を続けたりと店舗ごとに対応が分かれる。経営者は「『3密』なのに」「『ステイホーム』と矛盾している」と要請対象に加えるよう求めている。
「職場は3密。休みたくても休業要請の対象に入らず、休めない」。宮城県登米市で理容室を営む50代男性が訴える。休業や時短営業に応じた事業者に対する協力金について「飲食店は営業時間を一部短縮しただけでもらえるのに、私たちはこわごわ営業を続けている」と不満を漏らす。
宮城県南の30代女性理容師も「髪や顔に直接触れ、客はマスクができない。不安が大きい」と語る。家族で営む店は大型連休中の休業を決めた。「本来なら稼ぎ時で苦渋の選択だ。生活のために営業する店や仕方なく働く従業員は多い」と明かす。
仙台市内で美容室4店を経営する本郷紘一さん(37)は13日から全店を休業した。「2、3時間の対面接客は当たり前。従業員と客の安全確保を第一に考えた」と協力金の支給を求める。
秋田県美容生活衛生同業組合の山本久博理事長(69)は2店を時短営業する。「店を開けるのを認めているのに、国や県は『ステイホーム』を呼び掛ける矛盾した状況。肩身が狭いような気持ちもある」と語り、各地の対応を注視する。
理美容業を休業協力金の対象に加えた愛知県の例もあり、約900店でつくる宮城県理容生活衛生同業組合は24日、県と仙台市に休業補償を求める要望書を提出した。阿部忠理事長(67)は「消毒液やマスクは品薄だが、補償がなければ家賃を支払うためリスク承知で店を開けざるを得ない」と指摘する。
約1200店が加盟する宮城県美容業生活衛生同業組合の今野仁理事長(63)も「行政の最低限の後ろ盾があれば安心して休業できる」と話す。