日本の盆栽の海外輸出が飛躍的に伸びている。アジアや欧米を中心に、日本文化への関心に加えて自然を凝縮したアートとしても楽しまれ、「BONSAI」は国際語として定着。昨年の輸出額は10年前の約10倍で、過去最高を記録した。輸出が本格化する秋を迎え、産地の関係者は「海外での人気を、縮小する国内需要の掘り起こしにもつなげたい」と期待を込める。
江戸時代から伝わる松盆栽が国内シェアの8割を占める高松市。9月下旬、同市国分寺町の盆栽農家、山地宏美さん(60)が、スイス・チューリヒ在住のITエンジニア、リュッティマン・レモさん(37)を盆栽園に迎えた。
平成11年から1年間、関東地方で生活し、日本人女性と結婚したレモさんは盆栽歴13年。過去に山地さんからサツキを輸入したことがあり、日本への観光旅行を機に「ぜひ訪問したい」と熱望した。山地さんの説明を熱心に聞き「自然がコンパクトにまとまった姿が『BONSAI』の魅力」と熱っぽく語った。
日本貿易振興機構(JETRO)によると、盆栽と庭木を合わせた輸出額は、平成13年で約6億4千万円だったが、昨年には過去最高の約67億円を記録した。
主な輸出先は中国、イタリア、オランダ、米国など。アジアでは富裕層がステータスシンボルとして高額な盆栽を買い求め、欧州では簡易な盆栽がインテリアとして受け入れられる傾向にある。丁寧に育てられた日本の盆栽は芸術品としても普及しているという。
昨年11月、日本の盆栽技術を披露する「アジア太平洋盆栽水石大会」が初めて高松市で開催され、約30カ国・地域から延べ7万6千人が来場。即売会では愛好家やバイヤーが次々と購入し、海外での盆栽ブームを裏付けた。今年9月、フランスに招かれて技術指導をした山地さんは「海外にはより良い盆栽を求める熱意と愛情がある」と話す。
「BONSAI」人気を受け、香川県内では昨年、輸出に必要な条件を満たした盆栽業者が10件から15件に増えた。国際大会の効果もあってか、県内からの盆栽輸出本数は今年すでに1万本を超え、昨年実績(1万2千本)を上回る勢い。JETRO香川も、欧州の園芸業者を招いた商談会の年内開催を予定するなど、市場拡大を支援する。
海外でのブームとは対照的に、国内では住環境の変化や趣味の多様化などで、盆栽の需要は伸び悩んでいる。日本盆栽協会に加盟する愛好家数はピークだった数十年前の約3万人から現在は約7千人に減少した。
「われわれは技術に自負がある」。山地さんは「高い水準の盆栽を世界に見せるためにも、国内市場が元気を取り戻してほしい」と願っている。