「PCをロックした。解除には金が必要」身代金型ウイルスにご用心

パソコン使用中に画面を操作不能にした上で、復元名目に金銭を不当に要求する新種のサイバー攻撃が今年5~9月、国内で160件以上も確認されていることが4日、ソフト開発会社「トレンドマイクロ」(東京)の調査で明らかになった。パソコン操作の回復を人質にとる形で金銭を要求する手口から「身代金型ウイルス」と呼ばれ、海外で感染報告が相次いでいる。サイバー犯罪者が日本で稼げるかを試している可能性があるといい、トレンド社は警察当局への調査内容の報告も検討している。
 ウイルス対策ソフト「ウイルスバスター」を手掛けるトレンド社によると、新種のウイルスは主にパソコンの起動直後に発生。突然画面がフリーズし、作動しなくなる。その後、海外の政府組織を装った「違法な行為をしたのでパソコンをロックした。解除するには金が必要」という内容の英語メッセージと、電子マネーでの支払い方法が表示される。電源を落として再起動しても、停止したままで同じメッセージが表示され続けるという。これまで海外では感染報告があったが、日本ではほとんどなかった。
 ところが今年5月以降、日本でも国内の個人のパソコンユーザーの感染が急増。5~9月に160件以上の被害報告がトレンド社に寄せられたという。報告によると、米国政府組織「国土安全保障省」などを名乗るケースが多く、要求額は主に300ドル(約3万円)で、手口から同一の海外犯罪グループが関与している可能性がある。
 新種のウイルスは通常、国内外の企業のホームページ(HP)などに仕掛けられ、閲覧しただけで感染するケースが目立つ。
 ウイルスを解除するには基本ソフト(OS)を入れ直して初期化することが必要で、データ復旧は困難。個人での解除は難しく、金銭を支払ってもウイルスが解除される保証はないという。
 日本での報告例の急増について、トレンド社は「サイバー犯罪者がネットワークの整備された日本に目をつけ、どれだけ稼げるかを試している恐れがある」と指摘する。
 ネットワーク犯罪に詳しい甲南大学法科大学院の園田寿教授(刑事法)は「パソコン操作を“人質”にして身代金を要求する新しい悪質なウイルス。攻撃に備えてデータのバックアップを取るなど自衛手段を講じておくことも重要だ」と話している。

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