ローソンストア100は12月25日から、全国の店舗で「100円おせち」を発売する。2012~18年度にかけて、100円おせちの累計販売数は550万個を突破。19年度は昨対比120%となる約138万個の販売を見込む。なぜ、これほど強気の予測を立てているのか。
100円おせちは、おせち料理に使うかまぼこや伊達巻などを小分けにパックし、それぞれ1個100円(税別)で販売するのが特徴。19年度のラインアップは、18年度から4種類増えて全32種類となる。伊達巻、黒豆、かまぼこといった伝統的なものだけでなく、最近ではお酒のつまみにもなる「ほたてわさび」といった商品も投入している。販売数は16年度から右肩上がりで増え続けており、18年度は昨対比130%となる115万個を販売。過去最高の実績となった。
●軽減税率と外食チェーンの正月休みが追い風
なぜ、100円おせちはこれほど売れているのか。同社はおせち料理が「作る時代から、買う時代」にシフトしているためだと分析している。18年、楽天市場が30~60代の女性400人を対象に実施した「おせちに関する意識調査」によると、重箱入りおせちや単品のおせち料理を購入する「購入派」は36.1%。「手作り派」(24.2%)を上回る結果となった。購入したおせち料理と自分で作る単品を組み合わせる「組み合わせ派」は39.8%だった。
100円おせちが売れるようになった背景には社会環境の変化もある。国民生活基礎調査によると、1953年の平均世帯人員は5.00人だったが、2016年には2.47人にまで減少。さらに、国立社会保障・人口問題研究所によると、2015年の総世帯数に占める単身世帯数の割合は34.5%にまで増えている。
こうした状況を受けて、ローソンストア100は正月を少人数で過ごしたり1人で過ごしたりするお客が増えていると分析。さらに、「おせち料理を1品だけ買い足す」「1日で食べきれる量だけ買う」「好きなものだけ買う」といった傾向が強まっているとみている。ライフスタイルが多様化する中で、自分好みにカスタマイズできる点が支持されているようだ。
ローソンストア100が強気になっているのは別の理由もある。消費増税の影響により、外食をするのではなく、軽減税率の対象となるおせちを購入するケースが増えるとみている。また、同社商品本部の近藤正巳副本部長は「大手外食チェーンの中には正月休みを宣言しているところもある。間違いなく家庭でのおせちのニーズは増えるのではないか」と語る。
●コストカットのために努力
ローソンストア100では、100円という価格を実現するため、さまざまなコストカットに取り組んでいる。いくつか事例を紹介しよう。
19年度の新商品である「豚の旨煮」や「お煮しめ」は、製造・パック・在庫管理・物流を特定のメーカーに集約している。さらに、パッケージも統一している。
「くるみ甘露煮」は、くるみのサイズを統一せず、バラバラにしている。また、「わかさぎ」や「あさり」の佃煮と一緒に特定のメーカーに発注してコストダウンを図っている。
シーズンオフの工場を活用する取り組みもしている。「伊達巻」を製造する工場は、春・夏にしらすやちりめんじゃこを加工している。冬は生産する商品が少ないので、ときには閉めることもあるという。そこで、遊んでいるラインを活用し、製造している。また、「栗きんとん」や「栗甘露煮」を製造する工場は春・夏に贈答用のゼリーを製造している。この工場も冬には製造ラインの稼働率が落ちる。そこで、ゼリーの製造ラインを活用し、栗きんとんを製造している。
毎年20万本以上売れる人気商品であるかまぼこは、1社に大量発注し、大量製造することでコストダウンしている。さらに、販売の1年前から計画的な原材料の仕入れや生産計画を立て、無駄を出さないようにしている。高級食材の代名詞である「味付け数の子」も1年前から原材料となるニシンのタマゴを確保し、回転寿司のネタを加工する工場でカットしている。
こうしたコストカットの努力もしつつ、ラインアップを広げた結果、「お客さまは主婦が中心だったが、単身者や若い人も買うようになった」(近藤副本部長)という。
●人気インスタグラマーが提案
マーケティング施策として、100円おせちの活用方法を料理研究家の小林睦美氏に依頼している。小林氏は料理やスイーツの情報をインスタグラムで発信しており、約2.7万人のフォロワーを持つ。100円おせちを組み合わせた「洋風ワンプレーとおせち」や「中華風ワンプレーとおせち」といったような盛り付けを特設サイトで提案している。和風の組み合わせだけだと飽きてしまうので、それ以外でも楽しめるようにするための工夫だ。
強気の販売目標を立てた100円おせちはどのくらい売れるだろうか。