8月下旬、「はま寿司」から、酢めしを使った「グリーンカレー(380円+税)」が、数量限定で発売された。香草やココナツ、チキン、なすを使った、タイ風カレーライスである。
酢めしを使ったカレーは、先に「くら寿司」が「すしやのシャリカレー(350円+税)」を発売していたので、マネしたカタチとなる。だが、飲食業界では普通のことで、“対抗しただけ”と見る向きもある。
「はま寿司」と言っても、知らない人もいるだろう。いま、100円回転寿司では、もっとも勢いのある注目株である。
オリコンの「顧客満足度の高い回転寿司ランキング 2014」において、100円回転寿司の中では、「スシロー」「くら寿司」に次いで、第3位となっている。「かっぱ寿司」を抜いてしまったのである。
2014年の売り上げでは、「かっぱ寿司」に負けていたものの、店舗数では上まわっている。「かっぱ寿司」は、業績の悪化により経営母体が変わる騒動などがあり、リストラを実施。数十店舗を閉鎖したのである。
だが、この時点では「はま寿司」の知名度が低く、売り上げには結びついてはいなかった。2015年になって、出店を加速させるとともに、話題づくりのための新商品を発売した。
まずは、「旨だし鶏塩ラーメン(380円+税)」。数量限定ながら、1日に2万杯注文されることもあったほど大人気となり、話題づくりとしては大成功である。
次に登場したのが、「グリーンカレー」である。「くら寿司」のマネとはいえ、普通のカレーではなく、「グリーンカレー」としたのは、大きなインパクトとなった。他の回転寿司では、あり得ない発想である。
こ うした話題づくりが成功し、知名度を上げ、2015年現在では、売り上げ・店舗数ともに大幅増加となっている。店舗数は、第1位の「スシロー」に迫る勢い である。今年度は確実に「かっぱ寿司」を抜いて、第3位に躍進するだろう。ひょっとすると、「くら寿司」をも抜き去るかもしれない。
「はま寿司」の戦略は、それだけではない。
北海道や沖縄など、大手チェーン店の空白地帯へも積極的に出店している。輸送費の高くなる北海道や沖縄では、食材の調達コストがかかることから、他社は敬遠しがちなのだが、そこに先に出店することで、「100円回転寿司=はま寿司」を印象づけたのである。
なぜ、リスクを背負ってまで出店するのか。それは、リスクを回避するノウハウを持っているからである。
実は、「はま寿司」を経営するのは、飲食業チェーン大手の「ゼンショーホールディングス」である。「すき家」「なか卯」「ココス」「ビッグボーイ」「ジョリーパスタ」など、多くのブランドを有するので、チェーン展開はお手のものなのである。
「スシロー」や「くら寿司」は、寿司業界のみのチェーン展開だが、「はま寿司」は、多様な業態を運営してきた幅広いノウハウのあることが強みとなっている。「スシロー」や「くら寿司」とは違う事業展開を見せてくれるだろう。
ネタの良さでダントツな「スシロー」。ユニークなアイデアで子連れ客を掴んでいる「くら寿司」。この巨大なライバルに戦いを挑む「はま寿司」のこれからの動きが楽しみである。
(佐藤きよあき)