「14階建てなら一流物件」「15階建てなら三流物件」のワケ

■たった「5センチの差」で住み心地が大変化
マンションで最も多いのは高さ45メートル以下の物件です。なぜなら、それ以上の高さになると、建築基準法や消防法などの規制がとても厳しくなるから。そこで広く普及している45メートル以下の物件ですが、注目すべきはその階数です。14階か、15階のはずです。さて、どちらが「いい物件」かわかりますか。
多くのデベロッパーは15階建てにしようとするでしょう。そのほうが、住戸数が増え、儲けも大きくなるからです。もちろん15階にするのは建築基準法上も合法なので、つくるうえでの問題は特にありません。問題あり、なのは住み心地です。つまり、住人にとって15階はあまり歓迎できる物件とはいえないのです。
まず14階に比べ、階高が低くなります。14階建てはおおむね3メートル以上ありますが、15階建ては3メートル以下です。それにともなって天井高も低めとなります。リビングダイニングでいえば、天井高は14階建てが2.5メートルなのに対し、2.45メートル。玄関の扉の開口部の高さも14階建てが2.0~2.05メートルあるのに、1.9~1.95メートルしかない。開口部は身長プラス30センチが理想といわれています。日本人の平均身長を170センチとすると2メートル。15階建てでは、その基準に満たないということになります。ちょっと窮屈。これを生理的に受け入れることができない人も多いはずです。
数センチの差ではないか。そう考える向きもいるでしょう。しかし、話はこれで終わりではありません。階高が低いことの影響で、床や天井が本来あるべき「二重」ではなく「直床・直天井」であることが多いのです。
すると音の問題が発生しやすくなります。上階の椅子を引きずる音やスプーンを床に落とす音が聞こえやすくなりますし、子供が飛び跳ねようものなら、もうたまりません。実際そうしたクレームが後を絶たない15階建て物件は少なくありません。しかし、私が知る範囲では売り主側はそれにきちんと対応しないことが多い。1戸に応じたら、全戸に対応しなければならないからです。
住み心地よりも自社の利益を優先しがちなデベロッパーのこと、そうしたコストがかさむことはとてもできないに違いありません。
■リフォームしづらい直床・直天井
直床・直天井の悪影響はまだあります。リフォームがしづらくなるのです。15階建てマンションの管理規約や細則には、勝手にカーペットをフローリングに変えたり、コンクリートの床・壁などに釘やビスを打ち付けたりすることを禁止しているケースが珍しくありません。例えば、リフォームで壁の位置を移動したいとき、床・壁に固定のための措置が必要になりますが、それが不可能になるのです。規則を無視して勝手にリフォームしたら原状復帰(元の状態に戻す)を求められます。
さらに、窓のサッシへの影響も生じます。直床ゆえにサッシのレールを床と同じ高さで設置しますと、雨水が浸入する恐れがあります。だから、床スラブから15センチほどコンクリートを立ち上げる水返し壁を設置し、その上にレールを設置するのです。そのことで、せっかくの窓が小さくなるだけでなく、フロアからそのまま障壁なくベランダへいくことができません。またがないといけない。その点、二重床の14階は下階までの空間が大きいのでフロアとレールをフラットにできます。
15階建てにすると、ワンフロア増えることで容積率いっぱい消化するので、建築面積(敷地のなかで建物が占める広さ)を多少狭くでき、その分、中庭のエクステリアの自由度が高まります。しかし、物件選びで重要なのはそうした見た目ではなく、デベロッパーが顧客の住み心地にどれくらい配慮するかなのです。
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一級建築士、碓井建築オフィス代表 碓井民朗
1947年生まれ。東京理科大学工学部建築学科卒。最新刊に「建築・設計のプロが教える『良識あるマンション』の見分け方・選び方」など。
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(一級建築士、碓井建築オフィス代表 碓井民朗 構成=大塚常好)

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