「4タイプ分析」男を出世させる妻、ダメにする妻

■「放任」望むセレブ夫尽くしたい「婚活組」
NHKのドラマ「ゲゲゲの女房」が好調だ。10年7月以降の視聴率は常に20%前後を記録(関東地区、ビデオリサーチ調べ、雑誌掲載当時)。「朝ドラ」としては珍しく、20~30代の女性に人気が高いという。
現代の婚活中の女性たちを見ていると、同作で松下奈緒さんが演じる村井布美枝のような「尽くす妻」への憧れの高まりを感じる。彼女たちの悩みは、こういったものだ。
「夫の出世を妻として支えてあげたいのに、それに値する男性に出会えないんです」
今回、「出世させる妻かどうか」を2軸から4タイプにわけた。このうち、拙著『セレブ妻になれる人、なれない人』の取材では、40代以上のほとんどが「ゲゲゲの女房」型だった。仕事で多忙な「セレブ夫」は、妻に対し「稼ぎ」や「管理」よりも「放任」を求める。家庭での雑事に関しては妻に一切まかせっきり。子供は勝手にすくすくと育ち、何時に帰っても文句を言われないので、思い切り仕事ができる。経済は自分が握って、妻には「家計費」を決まった額だけ渡す――。「放任」が出世の背景にあるのだろう。
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「ゲゲゲの女房」型/夫のために尽くせる妻。内助の功に徹し、仕事の邪魔はしない。生活費は一定額を妻に渡し、残りは夫が管理。しかし現実には尽くしきれない妻が「昭和妻」化している。
「プロデューサー」型/夫の才能を妻が見出し、成功に向けてバックアップ。夫の仕事にも積極的に口出しをする。クリエイターや政治家では事例豊富だが、日本のサラリーマンでは難しいか。
「同類婚」型/高収入同士のカップル。性別役割分業の意識が薄い。稼ぐ妻が夫の留学費用を捻出することもある。夫の出世と子育てのためにキャリアを捨てられる人は「セレブ妻」化。
「昭和妻」型/家計は妻が管理し、夫には小遣いだけ渡す。収入減でも生活レベルは落とさず、自らが働くこともない。夫を「長男扱い」するため夫婦間は没交渉。夫の出世意欲も減退していく。
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女性たちは、ドラマのように夫の仕事内容を深く理解したうえで、献身的な支援をしたいと望む。しかし、夫は「放任」してほしいのだ。現実に、多くの「できる男」は自己中心的で、自我を殺せる空気のような妻を求めている。だから、「今日の仕事はどうだったの?」などと聞かず、「子供が熱を出したから早く帰って」といったメールは打たない妻が、「夫を出世させる妻」の一類型といえる。
「ゲゲゲの女房」型の正反対が、「管理」の強い「プロデューサー」型である。米国では、地位のある男性は挨拶のときに、「今の自分があるのは彼女のおかげ」とパートナーである妻をほめたたえる風習がある。これは「おべっか」ではない。ビル・クリントン元大統領の妻ヒラリー・クリントンやバラク・オバマ大統領の妻ミシェル・オバマは、いずれも弁護士資格を持つキャリアウーマンで、ある時期から夫の政治活動を猛烈に支えるようになった。
日本でも菅直人元首相の妻菅伸子さんは舌鋒鋭い「姉さん女房」として知られる。また、お笑い芸人の太田光氏の妻で所属事務所社長の太田光代さんや、デザイナーの佐藤可士和氏の妻でマネジャーの佐藤悦子さんも同類型だろう。
しかし日本ではまだ希有な例にすぎない。政治家やクリエイターといった職種ならば夫婦での協働は活きやすいが、組織のなかで仕事をする場合には、日本では職場と会社の距離が遠い。それなのに「早く課長になれ」「もっと英語やったら?」と尻をたたかれても、かえって男性はくじけてしまう。「最強」の味方である「プロデューサー」型の妻と結婚すると、一見心強いようだが、もし応えられなかったら……。そう思って委縮してしまうリスクもあるのだ。
起業家男性を対象に「婚活」に励む35歳・総合職のNさんは、「今まで企業で働いて得たノウハウで、彼の会社を成功させる手助けができると思うんです」と言う。残念ながら、これはキャリア女性の陥りがちな罠だ。取材する限りでは、妻に自分のテリトリーである会社で「思い切り手腕を振るってほしい」と考えている男性はいない。
実際、取材した「セレブ妻」たちは、「能ある鷹は爪を隠す」タイプが多く、「やればできるけれど、夫に望まれない限り仕事には口を出さない」というスタンスを貫く人が多かった。キャリアを活かすことよりも、「いつ彼が帰ってもいいように、15分で食事を出せる支度が常にしてある」というスキルが求められるようだった。
それでは高学歴高収入キャリアカップルの「同類婚」型はどうだろうか。国立大学を卒業し、テレビ局に就職した30歳のHさんは、老舗企業の3代目社長と結婚後、しばらくして退職した。その理由を次のように話す。
「2人とも仕事をしているときはストレスでケンカばかり。家庭内に社会的責任の大きな仕事をしている人が一人いたら、一人はバックアップに回らないと」
高いキャリアを持つ男女の「同類婚」型では、どちらかが折れなければうまくいかない。特に忙しすぎる2人に子供ができると、夫婦仲には緊張感が伴うようになる。「妻が自分より出世したら」という重圧に苛まれ、実際に妻の稼ぎが増えてセックスレスになったというケースもあった。

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