創業者のジャニー喜多川氏(2019年に87歳で死去)の性加害問題、元副社長の滝沢秀明氏(41)による芸能プロダクション・TOBEの設立によって、ジャニーズ事務所が揺れているが、次に見込まれる火種が「嵐」の退所問題であることが元同事務所スタッフの話で分かった。キーマンは芸能活動休止中のリーダー・大野智(42)だという。
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大野が中心になって退所か
5人からなる嵐は2020年12月31日をもってグループとしての活動を休止。同時にリーダーの大野智は芸能活動を休止した。
嵐と大野の活動休止の経緯を簡単に振り返ると、まず大野が自分以外のメンバーである櫻井翔(41)、二宮和也(40)、松本潤(39)、相葉雅紀(40)に対し、「自由な生活を一度してみたい」と活動休止の意思を伝えた。すると、ほかのメンバーはこれを了承した上で、「5人じゃないと嵐じゃない」とし、グループの活動も止まった。
しかし、元同事務所スタッフによると、大野の芸能活動休止の背景には、藤島ジュリー景子社長(57)との溝もあるという。
「ジュリー社長と大野氏の亀裂が決定的になった原因は、大野氏に関する女性誌のある記事への社長側の対応にある。その対応が大野氏の意思とは異なったため、不満を抱いた。大野氏にとっては大事な問題だった」(元同事務所スタッフ)
ジュリー社長としては秘蔵っ子である嵐の大野の反発は不本意だっただろうし、自分の考えが尊重されなかった大野は失望した。
大野が現在、沖縄県宮古島で過ごしているのは知られている通り。芸能界を離れた生活を送るようになってから既に2年半も過ぎた。このため「どうして大野は嵐とジャニーズ事務所に留まっているのか」という声が出始めているが、ここに本人の真意が隠されているという。
「大野氏が嵐を離れないのは『自分はあくまでメンバーの1人』という強い意志の表れ。事務所を辞めない理由も同じ。事務所を去ったら、同時に嵐の一員ではなくなってしまうから。大野氏はほかのメンバーとの関係が悪いわけではない。だから、ほかのメンバーからも『大野を抜きにして嵐の活動を再開したい』といった声が上がらない」(同・元同事務所スタッフ)
もっとも、大野が芸能活動に戻らないと、嵐の動きは止まったまま。大野はどうするつもりなのか。
「(今年3月にイギリスBBCの報道によって)性加害問題が表面化したこともあり、もうジュリー社長の体制下で活動する気はないだろう。活動休止が長期化したのも事務所に戻るつもりがないから。メンバーたちと一緒に退所し、自分たちでやっていくつもりだと思う。嵐というグループ名は事務所が商標権を持っているから使えないが、名前を変えてもファンは着いてくる」(同・元同事務所スタッフ)
2年半前とは違い、大野がメンバーたちと一緒に同事務所を出やすい環境になっている。昨年11月には滝沢秀明氏が退所し、今年3月にTOBEを旗揚げ。同調者が相次いだ。その後、滝沢氏らが困っている様子は特にない。また、性加害問題の表面化後はタレントたちが退所するのもやむなしという世論も強まっている。
独立しても困らない
大野と同調者は退所してもやっていけるのか。また、具体的にどんな活動が考えられるのか。
「十分やっていける。まずグループの活動再開コンサートをやればいい。会場はライブ『アラフェス』をやっていた国立競技場(東京)でもいいが、全国6大ドーム(東京・東京ドーム、名古屋・バンテリンドーム、大阪・京セラドーム、埼玉・ベルーナドーム、福岡・PayPayドーム、北海道・エスコンフィールド)をすべて回ったって、チケットは即完売になる。そうすればファンが歓喜する一方で世間の話題をさらい、グループと大野の空白期間は瞬く間に埋まる」(別の芸能事務所幹部)
確かに活動再開ツアーが行われたら、その初日の模様がスポーツ新聞の1面を飾る可能性は高い。盛り上がるだろう。
活動資金が必要になる。それについては「全く心配ない」(同・元同事務所スタッフ)という。ファンクラブが分厚いからである。グループが2年半も活動していないにもかかわらず、現在の会員数は300万人。同事務所内で断トツだ。
ファンクラブの年会費は4000円なので、その収入だけで実に年間120億円以上ある。多くの会員が大野ら退所組のファンクラブに移行するだろうから、必要経費を除いても巨額の資金が残る。メンバーたちは目先の金のことを心配する必要がない。
一方で現在も相変わらずテレビ局による同事務所への忖度が続いている。このため、退所したメンバーたちはドラマ界から排除されることが予想される。それでも「仕事で不自由することはない」(同・別の芸能事務所幹部)という。
もしも、大野、二宮、松本たちがドラマ界から締め出されたら、NetflixやDisney+など外資系有料配信動画に出たらいいからだ。出演依頼が相次ぐはず。米倉涼子(48)はドラマ界から排除されているわけではないのに、ここ2年は外資系の動画にしか出ていない。
民放の1時間ドラマの制作費は約3000万円だが、外資系は1時間作品で同1億円規模。主演のギャラは民放が1本300万円程度であるのに対し、外資系は1本1000万円以上。1年に外資系の動画1作品に出演するだけで、連ドラ3作品のギャラを上回る。外資系の動画を観る人も増えているから、存在感が薄らぐ心配もない。
もし嵐から退所組が出た場合、その彼らをドラマから締め出したら、困るのはテレビ界側ではないか。嵐はなにしろ300万人以上のファンクラブ会員がいるグループなのである。それなのに排除したら、ドラマ界にとって大きなマイナスだし、視聴者側のテレビへの不信感も高まる。ドラマに誰を出すのかの基準が分からなくなってしまう。
楽曲リリースは配信で出来る。TOBE所属の7人組・IMP.のデビュー曲となるデジタルシングル「CRUISIN’(クルージン)」も配信だ。CMもまた全く問題ない。元SMAPの草なぎ剛(49)がSUNTORYなどのCMに出演しているのは知られている通り。スポンサーには芸能界のしがらみなど関係ないからである。
行動を共にしない者も?
ただし、メンバーの中には大野に同調しそうにない者も最低1人はいるという。同事務所との関係が極めて良好であることなどが理由だ。
「事務所側としてはメンバーを1人でも多く残したい。平野紫耀、神宮寺勇太、岸優太は退所したが、永瀬廉と郄橋海人は残留したKing & Prince(キンプリ)と同じで、完全な形で出ていってほしくない」(前出・元同事務所スタッフ)
全員で出ていかれると、同事務所側のマネージメントに問題があると見られてしまうし、面子も損なわれるためだ。
元同事務所スタッフは「年末までに嵐の退所問題を中心に大きな動きがある」と見ている。滝沢氏と平野、神宮司、岸の退所が明らかになったのは昨年秋だったが、今年も同じようなことが起こると予測する。
「性加害問題による事務所のイメージダウンがかなり大きく、タレントたちは自分の将来について真剣に考えている」(同・元同事務所スタッフ)
嵐の場合、2024年11月にデビュー25周年を迎える。そろそろグループの身の振り方について発表しなくてはならない。これもファンクラブが関係する。活動を休んでいるのに会費まで払ってくれている300万人以上を待たせ続けるわけにはいかない。
「嵐は頭の良い大人の集団だから、誰が自分たちを長く支え続けてくれたのかが十分分かっている」(同・元同事務所スタッフ)
カギを握る大野の動きが注目される。
高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。
デイリー新潮編集部