『あつまれ どうぶつの森』なぜ20~30代女性ユーザー急増? 理由は“新型コロナ”と“インスタ”にあり

任天堂の人気ゲーム『どうぶつの森』シリーズの最新作『あつまれ どうぶつの森』が大盛況を博している。新型コロナウイルスの影響で外出頻度が極端に減ったところに人気シリーズの最新作がリリースされ、時流が思わぬ追い風となった本作。家にいても仮想空間で友人や恋人との“日常”を楽しめることがヒットの起因になった。さらにその波は普段ゲームをあまりしないような層にまで届き、今までとは異なるファンの間で盛り上がりを見せている。

【写真】『あつまれ どうぶつの森』でデートするカップルも

 新型コロナウイルスが流行る数ヶ月前、インスタグラムでは美しく飾られたマイルームのインテリアや“おうちカフェ”と呼ばれる手作りのお菓子の投稿が流行っていた。いわゆるF1層と呼ばれる20~30代前半の女性たちを筆頭に、インスタグラム内の人気メディアで「リポスト」されることを通して、そのトレンドは急速に広まる。

 特にその筆頭となったのが、インスタグラムをメディアとして運用している「@make_my_room.me」の浸透だ。部屋全体のインテリアを紹介する本アカウントと、部屋の一部や家での過ごし方を紹介することに焦点を当てた姉妹アカウントの「@in_my_room.me」は、今まで参入がなかった若年層向けのインテリアメディアの樹立となった。

 今までのインテリアといえば、主婦層を中心に見栄えと共に機能重視、つまりは“収納”や“家事テク”を意識したルームコーディネートが紹介されることが多かった。しかし「メイクマイルーム」は、機能性について説明するハウツー的なポストではなく、視覚的な“かわいらしさ”、“憧れ”を重視したポストを載せ続ける。こうしたアカウントが台頭したことで、有名ブランドのファッションやおしゃれなカフェを巡ることが“インスタ映え”と認識されていた時代のトレンドは移ろい、徐々に“内”つまりは家の中に意識が向かっていった。

 そんな背景の中、『あつまれ どうぶつの森』の発売と新型コロナウイルスの蔓延による外出自粛の動きが急速に広まる。このことから、『あつまれ どうぶつの森』の中でのインテリアコーディネートや、マイデザイン機能を使ったファッションを楽しむ行為が新たなインスタグラムのトレンドとマッチし、今までとは異なるF1層のユーザーが増えたのだ。いわゆるミューズのような憧れの存在が現れると、若年層のトレンド加速は一気に高まる。

 普段はコスメやファッション、インテリアなどトレンドに合わせた投稿をしていたアカウントが『あつ森』でかわいいファッションに身を包み、かわいい家を作っていることを紹介すると、瞬く間にファンがその様子を真似て、コスメやファッション、インテリアが好きな層が一気に『あつまれ どうぶつの森』に参入し始める。すでにTwitterでは「あつ森専用垢」としてゲーム用のアカウントを取得し、趣味の合うユーザー同士で交流を始めている。

 同じトレンド好きでも、“系統”が違うとなかなか交わらないのがこの層の面白いところ。各々がゲーム内での自分のインテリアの「系統」を理解し、好みのユーザー同士で固まっている印象がある。ゲームの攻略や、やり込み度を競ったり自慢するものではなく、あくまでビジュアルとして美しいものを作り、楽しむことが目的のように感じられた。

 それをいち早くキャッチした女性向けメディアは、こうしたF1層のユーザーに響きやすい、かわいいマイデザインのコードをまとめた記事、人気アイドルの衣装と同じデザインをまとめた記事などが配信されている。彼女たちは、かわいい格好で、お気に入りのコスメで出歩けない今だからこそ、島での生活で「かわいい」暮らしを全うしているのだ。

 友人と出かけられなくてもオンラインで会うことで、島の中で“あつ森映え”しているユーザーは多い。これは『あつまれ どうぶつの森』にカメラ機能があり、数種類用意されたフィルターと、ポーズをとって撮影できる機能がさらにユーザーの楽しみを引き出したといえよう。まさに日常でスマホを使っておしゃれな写真を撮ることを楽しんでいた層が、オンラインで、そして島の中でアバターを使い同じことをしているのだ。

 『あつまれ どうぶつの森』の機能がより柔軟なものになり、リアルライフを投影しやすくなったことは、ヒットを加速させる要因となっただろう。それ故に、リアルライフで仲の良い友人同士が「シミラールック」と呼ばれる双子のようなコーディネートで流行りのカフェに行くのと同じように、お互いのアバターにそっくりなデザインの服を着させて島の中で遊んでいる写真をアップしているアカウントや、彼氏と島の中でデートしているアカウントもいる。外出できないストレスを発散する役目としても一役かっているように見受けられた。

 「Stay Home」の余波はこうしたところにまで広がっている。友人や恋人との時間を一番重視するであろうF1層にとって、『あつまれ どうぶつの森』はまさに良い拠り所となっただろう。同じ目的意識を持ち、同じ空間を共有することは絆を深める上で非常に重要だ。本作の存在で、「Stay Home」が辛く悲しいことから、前向きに楽しめる“おうち時間”になっていることを嬉しく思う。

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