『いいとも!』の魅力 枠の中で盛り上がる究極のマンネリズム

 来年3月で終了することが発表された『笑っていいとも!』(フジテレビ系)。
 映画化もされた芥川賞作家・吉田修一さんの小説『パレード』(幻冬舎文庫)には、こんな一文がある。
<「笑っていいとも!」ってやっぱりすごいと私は思う。一時間も見ていたのに、テレビを消した途端、誰が何を喋り、何をやっていたのか、まったく思い出せなくなってしまう>
 関東学院大学文学部教授(メディア論)の新井克弥さんは、これこそが『いいとも!』最大の魅力だと話す。
「タモリは大まかな進行は制作側に任せて、そのシナリオのうえで自由に立ち回る。決まりきった枠という制約のなかで、ゲストや他のレギュラー出演者たちと盛り上がる。いうなれば究極のマンネリズム。ひとつのパターンの上で、無限のものを繰り出しているんです」
 実際、タモリ自身もマンネリを大切にしながらも、その中に刺激を入れる工夫を常に凝らしていた。
 26年間レギュラーを務める笑福亭鶴瓶(61才)は、番組中にボケをタモリに潰されることがたびたびあった。それがどうしても嫌だった鶴瓶はある時、直訴したという。すると、タモリは飄々としてこう答えた。
「邪魔することによって、いつものセオリーじゃない笑いが生まれるんだよ。つまりはマンネリがなくなるんだよ」
 そのときの感想を鶴瓶は、あるインタビューでこう語っている。
<いつも見てた同じようなコーナーに付加価値を生むためにも、マンネリを防ぐためのプロの言葉やって思った>
 その32年間の“マンネリ”も今終わりを迎えようとしている。

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