『京急蒲タコハイ駅』にNPO法人が「公共性を完全に無視」と抗議 サントリーは「真摯に受け止め対応」と装飾撤去を認めて駅広告を縮小

「ここで飲めるというのは、ちょっとした背徳感とともに楽しめそうですね」──駅のホーム上でこうアピールしたのは俳優でフリーアナウンサーの田中みな実(37)。サントリーが展開する人気のアルコール飲料「こだわり酒場のタコハイ」と京浜急行電鉄がコラボして開催したイベントでの一幕である。

【写真】「タコハイ駅」に飾られた“お祭り風”の装飾、縮小された駅広告の様子など

 サントリー京急電鉄および大田区商店街連合会がコラボし、5月18日~6月16日の期間中、京急蒲田駅や周辺エリアで各種施策が行われている。その一環として、京急蒲田駅は「京急蒲タコハイ駅」に様変わり。構内や周辺の各種装飾を変更し、CMキャラクターを務める田中によるアナウンスを実施するなど、“タコハイ”仕様になっていた。

 さらに京急蒲田駅の2番線ホームで飲食を楽しめるイベント「京急蒲タコハイ駅酒場」が5月18日(土)、19日(日)、6月8日(土)、9日(日)の4日間で開催。このイベントを訪れた40代男性が楽しげに語る。

「京急蒲田駅の2番線ホーム上に設けられた酒場と停車中の列車の中で、蒲田名物のギョウザとタコハイが楽しめます。大盛況でしたが、いろいろ装飾があってお祭りっぽい雰囲気なので、待っている間も楽しめます。電車の中で飲むのは、ちょっと背徳感もあって新鮮な体験でした。

 京急蒲田駅の2番線ホームというのは待避線で、過去にも展示などのイベントが行われたと聞いています。シチュエーションがおもしろいので、これからも2番線ホームを有効活用したイベントが開催されてほしいです。『京急蒲タコハイ駅酒場』は6月もリピートして行きたいくらいですよ!」

イベントに集まった抗議の声

 それに対して、アルコールや依存症薬物をはじめとする依存関連問題の予防に取り組むNPO法人「ASK」が抗議の声を上げた。同NPO法人は、主婦連合会との連名で“中止を求める申し入れ書”を送付したとして、5月17日にホームページに全文を掲載した。サントリー京急電鉄の両社に対して、〈公共の場である駅を酒類マーケティングのターゲットとする問題〉などを以下のように訴えている。

〈駅は不特定多数が利用する極めて公共性が強い場です。乗客には、20歳未満、ドクターストップで禁酒・断酒中の人や飲めない体質の人もいます。また、早朝からの通勤・通学や勤務の移動時に酒類広告はなじみません。

 駅の呼称を期間限定で「京急蒲タコハイ駅」とし駅空間をその仕様に変更するなど、公共性を完全に無視した愚行です。絶対にやるべきではありません〉(ホームページに記載された申し入れ書より)

 また、「ASK」の事業部「アスク・ヒューマン・ケア(AHC)」の公式X(旧Twitter)は5月19日、〈抗議の効果があり、西口の看板と何枚かのポスター以外は、タコハイ仕様の装飾を極力取り外したとのことですが……〉と報告していた。

サントリー広報部の回答は

 装飾を撤去したというのは事実なのか。サントリー広報部に問い合わせたところ、以下のような回答だった。

「(装飾を取り外したのは)事実です。駅看板特別装飾の期間を短縮し、駅構内に掲出する予定だった広告を縮小しました。具体的な掲出場所、その他の対応に関しては回答を差し控えさせていただきます。また、ご指摘を受けて、『京急蒲タコハイ駅酒場』の6月の実施に関しては関係者間で検討を続けております」(広報部の担当者、以下同)

 今回の抗議をどのように受け止めているのか。

「当社は、業界自主基準等に則り、20歳未満飲酒・飲酒運転・妊娠中授乳期の方の飲酒、多量飲酒等の不適切な飲酒防止に努め、お酒を控えている方、お酒が飲めない方への配慮をした上で、酒類販促活動を実施しており、今回もその考えに基づいて実施しています。

 一方で、今回の活動の一部においてふさわしくないといったお声をいただいたことも確かであり、真摯に受け止め対応していきます」

 日本ではアルコール健康障害対策基本法が制定されており、酒類の表示・広告や販売方法に関して、酒類の製造販売に関わる事業者には自主規制が求められている。サントリーに限らず、各社が独自の「自主基準」を設け、広告会社などとマーケティング活動を行っているのが現状だ。今回のような指摘を受けるなかで、これからの「基準」のあり方も変わっていくのだろう。

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