【おはよう短編小説】僕は気がついてしまったのです「僕らの人生はエンディングのないドラクエ」であると

【おはよう短編小説】2009年の冬、僕は気がついてしまったのです。「僕らの人生はエンディングのないドラクエ」であると。それに気がついていながら僕は、度胸がないために、自分に自信がないために、いつもと同じ生活を続けています。
皆さんは『ドラゴンクエスト』を知っていますか? モンスターを倒しつつ、魔王を倒すために冒険を繰り広げるゲームです。モンスターを倒すと経験が手に入ります。経験がたまるとレベルアップして強くなり、より強いモンスターと戦えるようになります。
基本的に『ドラゴンクエスト』は「モンスターを倒して強くなって先に進む」を繰り返していくゲームです。主人公の勇者には、魔王を倒すという明確な目標(到達点)があります。それを達成するために、つらいモンスターとの戦闘も乗り越えることができるのです。到達するべきポイントがあるから、今を頑張れるのです。
僕たちの人生は、到達点のない『ドラゴンクエスト』のようなものです。魔王なんていない『ドラゴンクエスト』なのです。だけど、モンスターを倒す日々を繰り返しているのです。特に深く悩むこともせず、疑問に思うこともせず、目の前にあるモンスターをとりあえず倒す毎日を過ごしているのです。
僕は会社に対して「人生が終わるまでこの会社にいたい」という気持ちがないのなら、その会社にいるべきではないと思います。「仕事がつまらない」と思うなら、なおさらその会社にいる理由はないのです。まさにそれは「エンディングのないドラクエ」です。目標もなくモンスターを倒す日々。
そしてモンスターを倒す日々を続けて数十年を過ごし、僕たちが到達する場所はどこなのでしょうか? 魔王のような明確な目標や到達点なんかないのですから、そこには老いた肉体の自分だけがポツリと存在するだけでしょう。あとは老衰や病気で息絶えるのを待つ日々になります。
そもそも、あなたの人生が「エンディングのないドラクエ」ならまだマシかもしれません。とんでもないクソゲーなのではないですか? 「エンディングのないとんでもないクソゲー」なんじゃないんですか? そんなクソゲーでモンスターばかり倒す日々。倒しても向かうべき魔王の城がないクソゲーだったら、何のための人生なのですか?
老いる前に、いまのうちに、あなたの人生というハードウェアから「エンディングのないドラクエ」を抜き取り、「エンディングのあるドラクエ」にソフトを交換してはどうですか? あなたに到達すべき場所があるかどうかだけでも、いま、この場で考えてみてください。
……と言ってる僕ですが、皆さんに威張ることはできません。僕はまさに、「エンディングのないドラクエ」をプレイ中なのです。僕は転職する度胸もないし、スキルもないのです。飛び出すのが怖いのです。だから、「ぬるま湯」なのか「監獄」なのか「軟禁」なのかわからないこの会社で働き続けるのです。そう、不毛なモンスター退治を続けているのです。
え? モンスターを倒せば経験が手に入るから自分のためになるだろうって? それは屁理屈というものです。あなたは、レべル20になっても50になっても一生アリアハンから出ないつもりですか? 僕たちの人生には、向かうべき到達点が必要なのです。

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