【たばこと健康】がんリスク、禁煙で確実に減少

喫煙が、がんの発症と関わっていることは、多くの人が認識している。

 表1は、平成28(2016)年と29(2017)年の人口10万人当たりのがん死亡者数の群馬県と全国のデータである。がんで亡くなる男性は女性の1・5倍で、群馬県は、男女とも全国平均よりがん死亡の多い県といえる。また、平成29年には群馬県の人口10万人当たりのがん死亡者数が男女とも全国平均との差を広げた。原因はさまざまあろう。検証できていないが、喫煙率が全国平均よりも高いことが関連しているかもしれない。

 表2は、群馬県のがんの部位別死亡者数と、その人口10万人当たりの死亡者数である。表の順位は人口10万人当たりの死亡者数で並べたため、前立腺、子宮、乳房のように性別が限定されるがんは死亡者数が少なくても上位にランクされている。表2の右側2列には、がんと喫煙の関連を示した。能動喫煙、受動喫煙とがんの関連について、確実な科学的根拠があるとされた部位に「◎」を、可能性があるといわれる部位については「△」で示した。

 人口10万人当たりの死亡者数が最も多い部位のがんは気管・気管支・肺がんで、1156人が亡くなっている。このがんには、「能動喫煙」、「受動喫煙」ともに確実な科学的根拠があるとされる。2位の胃がん、4位の膵臓(すいぞう)がん、6位の肝臓・肝内胆管がん、8位の子宮がん、11位食道がん、13位口唇・口腔(こうくう)及び咽頭がん、14位の膀胱(ぼうこう)がんも能動喫煙の確実な影響があると考えられている。

 また、結腸がん、直腸がんは能動喫煙の影響の可能性があると考えられ、乳がんについては能動喫煙だけでなく、受動喫煙も影響している可能性が示されている。能動喫煙に「◎」のついた部位を合計すると3454人になるが、これらのリスク低減のためにも禁煙を勧めたい。

 群馬県は、平成28年度の男性の喫煙率が全国1位、女性は3位であったことを以前、紹介した。現在、新型コロナウイルス感染症が大きな問題となっているが、がん患者やがん死亡者の数は、それとはケタ違いであり、また増加傾向を示していることにも、注目する必要がある。

 喫煙すると、すぐにがんが発症するわけではない。がんの要因はたばこだけではないので、禁煙してもがんにならないとは言い切れない。しかし、確実にがん発症リスクは減少する。目先の感染症対策は重要ではあるが、がん対策としての禁煙推進の手も緩めるべきでない。

 禁煙は、呼吸器感染症やCOPDのリスク軽減の効果もある。新型コロナウイルス感染を恐れて検診や予防接種を受ける人が減っているといわれているが、健康診断・がん検診・予防接種などは、しかるべき時期に必ず受けていただきたい。(高崎健康福祉大教授 東福寺幾夫)

タイトルとURLをコピーしました