【スズキの四輪技術】2つの0.8リットルディーゼルを市場投入する意味

スズキは4月16日、東京都内で開催した四輪技術説明会で、今後に向けた燃費性能向上計画を発表した。興味深かったのは主としてインドなど新興国向けに開発している0.8リットル2気筒のディーゼルエンジンだ。
スズキは現在、インド市場で販売するマルチスズキ車用としてフィアットからディーゼルエンジンを調達している。インドでは燃費に対する関心が高く、その対象としてディーゼルエンジンの需要が急増中。一昨年初頭には、それまでのライセンス生産していたエンジンと同型のエンジンを追加調達したほどだ。そうした状況の中、スズキはより燃費効率の良いエンジンを開発することが急務とされていた。
今回披露されたディーゼルエンジンは、FF用とRR用の2タイプ。エンジンの基本構造は同じだが、車種タイプに応じて使い分けができるよう2タイプを用意したという。双方ともターボチャージャーを備え、低速域からトルクを発生するディーゼルエンジンと組み合わせ、小排気量ながらなだらかなトルクカーブを実現しているという。
また、圧縮比は15.1と限界レベルにまで下げ、排ガスのクリーン化を目指している。インドには独自の排ガス規制があるが、スズキによればそれは「ユーロ4」に相当するレベルで、現状ではそれ以上の環境基準は達成できてないという。
それと、2気筒であるが故にフリクションは減るものの、ディーゼル特有の振動は避けられない。とくに一定回転域までの振動は「自動車先進国では受け入れられるレベルではない状況にあり、マウントと合わせた設計は必須(スズキ)」な状態なのだという。
まずは燃費にこだわるインドでその成果を出すことが必達目標だが、ガソリン車ではあるものの、フィアット「ツインエア」のように2気筒車も着実に受け入れられる素地は整いつつある。四輪技術本部の笠井公人氏によれば「1年ぐらいでインド市場へ提供し、自社開発に切り換えたい」とする。
そのままインドで成功を収めれば、その波及効果で東南アジアにも広がっていく可能性もある。さらに、このエンジンに合いそうなコンセプト(たとえば昨年の東京モーターショーに出展したハスラークーペみたいに)を打ち出せば日本でも認められるかもしれない。ただ、スズキによれば、残念ながら日本への展開は考えていないとのことだ。
スズキが発表した2つのディーゼルエンジンを前にして、そんな未来を感じずにはいられなかった。

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