【体操パワハラ】塚原夫妻 急転「降伏」の真意

いったい、どう決着するのか。体操女子でリオ五輪代表の宮川紗江(18)から「パワハラを受けた」と告発された日本体操協会の塚原光男副会長(70)と千恵子女子強化本部長(71)の夫妻が2日、報道各社に「宮川紗江選手に対する謝罪」と題するファクスを送った。ただ、謝罪したのは宮川が会見を行った8月29日以降の対応についてのみ。何とか全面抗争ムードを収束させようとしているようにも見えるが、ただでは終わりそうにない。代表チームからの“千恵子外し”の圧力も強まっており、今後に向けて不透明さは増している。

宮川の元コーチ、速見佑斗氏(34)の指導中の暴力に対する協会処分に端を発した体操界の騒動は、いまだに収まる気配を見せていない。

塚原夫妻は8月31日に宮川へのパワハラについて文書で見解を発表して、パワハラに値する行為はなかったと主張。その際には宮川との会話を録音したものがあり、それが潔白の証拠になるとしていたが、この日新たな文書を発表。「私たちの『反撃』『反論』や『徹底抗戦』という報道がされました。しかしながら、信じて頂けないかもしれませんが、私たちには、そういった意図は一切ございません」とし「私たちのプレスリリースにより、さらに宮川紗江選手を傷つけ、誤解を与え、恐怖心を抱かせ、不信感、不快感を与えてしまったのであれば、全ては私たちの責任であり、本当に申し訳なく思っております」と謝罪の意思を明らかにした。

さらにメディアの取材に発した千恵子氏の「黙ってないわ」、塚原副会長の「全部ウソ」などの「感情に任せた自分勝手な発言等により、私たちが宮川紗江選手と対立姿勢にあるとの印象を与えてしまいました」と弁解した。

内情に詳しい体操関係者によれば、今回のファクスを受けて「宮川選手もコメントを出す準備をしている」という。また、塚原夫妻は宮川に直接謝罪する意向を示したが、認めているのは宮川の“告発会見”からここ数日の対応のまずさについて。宮川へのパワハラ行為そのものについては「日本体操協会が立ち上げる第三者委員会の調査活動に全面的に協力し、その判断を待ちたいと思っております」(文書原文ママ)としており、宮川が謝罪を受け入れる可能性は低そうだ。

塚原夫妻は先週末、宮川との会話を録音したテープを公開。千恵子氏がとった録音という手法には批判が噴出して「裏目」に出た(本紙既報)が、夫妻サイドはさらなる“証拠”を持っているとみられ、「パワハラはなかった」と認定されることに自信を持っているのだろう。

そんな中、ソウル&バルセロナ五輪メダリストの池谷幸雄氏(47)は本紙の取材に「文書で謝罪するのではなく、直接、自分の言葉で話してほしい」と訴える。加えてファクスの内容にも疑問を呈した。新たな文書では世界選手権(10~11月、カタール・ドーハ)や事前の合宿についても触れられており「(千恵子氏が)現地に行くつもりのようにも感じられる。この状況で行っても選手たちには何のプラスにもならないでしょう」。

確かに渦中の人物が同行すれば、選手を動揺させる可能性は高い。今回の騒動を受けて千恵子氏が参加を辞退しないのであれば「第三者委員会の判断が出る前でも、協会が対応すべき」と、池谷氏は大舞台に挑む選手たちを思いやった。

5日にはもう一人の当事者である速見氏が会見を行う。すでに協会の処分を受け入れており、暴力についての謝罪が主とされるが、新たな証言が飛び出す可能性も十分。騒動はまだまだ尾を引きそうだ。

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