残業、休日出勤……なぜ仕事がなかなか終わらないのか? そんな悩みを抱えるビジネスパーソンに、より効率的な仕事の進め方を教えるのは、『仕事が早く終わる人、いつまでも終わらない人の習慣』の著者で、人材育成コンサルタントの吉田幸弘氏だ。ストレスや疲労を生む、毎日の通勤。仕事の速い人は快速や急行ではなく、各駅停車に乗るという。その理由を吉田氏が語った。
通勤時間を有効活用しよう
電車通勤をしている人のほとんどは、会社に最短の時間で到着する急行電車や快速電車を使っているでしょう。
Photo by iStock
私も会社員時代は、関東地区でもっともラッシュ時の混雑率が高いと言われていた快速電車で通勤していました。
電車内はすし詰めで、まったく身動きが取れない状態。
新聞はもちろんのこと、新書サイズの本も読めません。何とか本を取り出してページをめくろうとしても、腕を動かすことができないのです。
本来、通勤時間は、情報をインプットしたり、今日の予定を確認したりする貴重なスキマ時間です。
通勤時間が片道1時間の人は往復だと2時間。週5日で10時間、月20日で40時間、1年にすると700時間にもなります。相当な時間です。
資格試験によっては700時間以内で受かるものもありますし、200ページくらいのビジネス書なら毎日1冊読むことができます。
しかし大勢の人々がなるべく早く会社に着こうと乗り込んでくる急行電車や快速電車は、インプットどころか、ストレスと疲れの原因になってしまいます。
混雑をしている電車内では「押した・押さない」などと言い合うような揉めごとも起こります。イライラしている人もけっこういて、そのイライラが周りに伝染します。
満員電車は百害あって一利なしです。
仕事が早い人は、急行電車や快速電車は避けて各駅停車で通勤し、貴重なインプット時間に充てています。
私は住んでいた駅の1つ隣が始発の駅でしたので、その駅発の各駅停車に乗り換えて通勤していました。イライラしている人は誰もいません。
ゆっくりと座って、新聞も本も広げて読むことができます。
乗り換えが不便な場合は、ラッシュ時間を避けた列車に乗ったり、グリーン車や特急に乗るのもいいでしょう。
私も何度か乗りましたが、電車の中が非常に快適な書斎に変貌します。
グリーン車や特急は費用がかかりますが、十分なリターンが得られる有効な投資といえるでしょう。
仕事の遅い人はゼロから始める
仕事がいつまでも終わらない人は、常にゼロの状態から取りかかる習性があります。
Photo by iStock
お客様にメールを送る時も、企画書などの書類をつくる時も、一から文面を考えるのです。
たしかに、相手の求めているニーズに合わせたものをつくるのはいいことでしょう。
しかし、毎回ゼロからつくっていたら、時間がいくらあっても足りません。
私は新卒で旅行会社に入りました。
法人向けの団体旅行の販売で、毎日1軒1軒会社を訪問し、お客様のニーズを把握して、それぞれのニーズに合った企画書を提出していきます。
形のない商品なので、内容は千差万別です。
九州旅行にしても長崎もあれば熊本もあります。同じ長崎の中でも市内をしっかり観光するプランもあれば、ハウステンボスに泊まってフリープランというコースもあります。
温泉に泊まって宴会を希望するお客様もいれば、おしゃれなホテルに泊まってディナーの時だけ全員が集まるだけでいいというお客様もいます。
私は1軒1軒お客様の話を聞き、企画書を作成していました。
しかしそんなふうにしていると、時間がいくらあっても足りません。
結果、平日は終電まで残り、土曜日に休日出勤しても仕事が終わらなくなりました。
せっかく訪問して旅行の企画書の提出を約束したのに、何の対応もできず延ばし延ばしにしてしまい、企画書を待っていたお客様に怒られたり、他社に仕事をそのまま持っていかれたりしたこともあります。
一生懸命やっているのに、成績は最悪の状態でした。
私とは対照的に、非常に優秀なBさんという同期の営業マンがいました。
Bさんは涼しい顔をして、お客様をどんどん獲得しています。
旅行の企画書を作成するために昼間ずっとデスクワークをしている、というわけではありません。きちんとお客様を訪問し、その上で結果を出しているのです。
「パクり」は悪いことではない
彼と私は何が違うのだろうか……。
Photo by iStock
ある時深夜の残業で2人だけになったので、ラーメン屋に行きながら「どうしてそんなにすいすい仕事ができるの? 企画書とかどうしているの?」と尋ねました。すると、驚くような答えが返ってきました。
「先輩のをパクってるんだよ」
パクリなんてカンニングじゃないか、ズルはダメだろう……そう思いました。
しかし、その後もっと衝撃的な話を聞きます。
支店で売上ナンバー1だったNさんも、課長が以前につくった企画書などをパクッている、と言うのです。
そう、パクリこそ「できる人」の技だったのです。
Bさんは、普段からいいなと思ったホテル、観光地などを企画用ノートに書き留めておいたり、いい企画書を見つけたら、テンプレート化して自分のストックにしていました。
テンプレート化してしまえば後はお客様名や日付等を替えるだけで、簡単に対応できます。
そもそも資料作成は、営業のメインの業務ではありません。従の業務です。
むしろお客様との関係づくりが主たる仕事です。
自分の満足で従の業務に時間をかけすぎたところで成果は上がりません。
学生時代は、試験でのカンニングはもちろんルール違反です。しかし、ビジネスではいいものはパクる、いわゆる真似するのが賢いやり方です。
ゼロから何かを生み出すのは非常に難しく、時間のかかることです。
会社には、先輩たちがつくってきたノウハウや知恵、やり方がストックされています。「デキる」同僚たちも、よりよいハウツーを生み出してくれているし、自分自身も、それらを毎日積み重ねています。
これらのストックを使わない、パクらない手はないのです。