「ミートショック」と呼ばれる牛肉価格の高騰で苦境に立たされる吉野家(9861)。
ところで、ミートショックはなぜ起こったのでしょうか。
オーストラリアの干ばつによる牛の減少や中国での需要増加などいろいろ要因はありますが、今回はその中でも原油や穀物の価格に焦点を当て、状況を振り返りたいと思います。
吉野家が原材料の高騰を受けて牛丼値上げ
吉野家は2021年10月29日、牛丼の値上げを発表しました。
牛丼並盛の価格は一杯352円(税込みで387円)から388円(税込みで426円)へと引き上げられました。
店内飲食価格とされる税込みの値段はついに400円を超えました。
この措置について吉野家は「昨今の急激な輸入牛肉の価格高騰や原油高の影響」を理由としています。
一杯400円となったことで、「もしかしたらそのうちワンコイン価格(500円)を超えるのでは」と不安に思われている人もいるのではないでしょうか。
次からは、ミートショックを引き起こした要因の中で、原油と穀物の価格について見ていきます。
原油相場の上昇
原油相場の上昇は牛肉自体の値上がりにつながるわけではないですが、国内では卸売り価格の上昇につながります。
原油相場は新型コロナウイルスの世界的な蔓延を背景に、2020年に入って大きく下落しました。
しかし、その後は一転して強い動きを見せ、2022年の2月時点で価格は1バレル90ドルを超えました。
これは実に、8年ぶりの高水準となります。
コロナ蔓延前の2019年の価格(約60ドル)と比べても、1.5倍近くあります。
原油相場がこれだけ急上昇を見せたことで、牛肉の輸送コストも大きく上がったことが推察できます。
背景には世界各国での原油需要の盛り返しや、OPEC(石油輸出国機構)による減産継続などが挙げられます。
飼料である穀物価格の値上がり
次に、牛肉の価格自体に影響を与える、飼料となる穀物の価格を見ていきます。
上の図は、小麦、大豆、トウモロコシの先物価格の推移を表しています。
小麦と大豆は9年ぶりの高水準で、トウモロコシも同様にここ10年においての高値圏で推移しました。
飼料となる小麦、大豆、トウモロコシがこれだけ値上がりする中、最上流となる畜産農家も苦しんでいるかもしれません。
そのうち世界から畜産農家が減り、牛の頭数も減って、牛肉の値段がさらに引き上がる可能性もあるのではないでしょうか。
吉野家の直近業績で売上高や営業利益はどうであったか
吉野家が2022年1月12日に発表した2022年2月期の第3四半期決算では、売上高が113,475百万円(前年同期比10.6%減)、営業利益が1,395百万円(前年同期は5,336百万円の損失)、経常利益が11,092百万円(同3,892百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純利益が6,153百万円(同5,499百万円の損失)となりました。
減収は、株式譲渡によって京樽を連結の範囲から除外したことが主な要因となりました。
前期に国内外で実行した大規模な営業時間の短縮、店舗休業の反動影響に加え、第3四半期の国内事業の既存店売上高の回復やアメリカ、中国の既存店売上高の堅調推移を背景に、京樽の連結除外の影響を考慮すると増収となりました。
営業損益については、コスト削減や販売価格の改定、販売管理費低減などの取り組みが奏功し、黒字となりました。
経常利益と親会社株主に帰属する四半期純利益については、各自治体からの営業時間短縮に係る感染拡大防止協力金や雇用調整助成金などの助成金等収入を計上したことにより、大幅に増加しました。
まとめにかえて
牛肉の値上がりにつながる要因はいくつかありますが、今回は先物市場での原油や穀物の価格に焦点を当て、紹介しました。
記録的な値上がりを見せる、原油や穀物の市況。
今後も注目です。
参考資料
株式会社吉野家ホールディングス IR情報(https://www.yoshinoya-holdings.com/ir/)
株式会社吉野家ホールディングス「2022年2月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」(https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS08813/ab88ee2d/a065/4598/aca6/1f3b33d489b9/140120220111565724.pdf)
株式会社吉野家「一部商品価格改定のご案内」(https://www.yoshinoya.com/wp-content/uploads/2021/10/29154753/news_202110293.pdf)
株式会社吉野家 ニュース(https://www.yoshinoya.com/news/2021/)